インプラント治療は補綴治療として有効な方法ですが、まれに副鼻腔炎(蓄膿症)と呼ばれる問題を引き起こすことがあります。
では、なぜインプラントで副鼻腔炎になるのでしょうか。
この記事では、副鼻腔炎とは何か、インプラント治療との関係、症状や原因について詳しく解説します。
目次
■副鼻腔炎とは
◎副鼻腔炎の特徴
副鼻腔炎とは、副鼻腔と呼ばれる鼻の周囲にある空洞に炎症が起きた状態を指します。
副鼻腔は、鼻の奥から顔の骨にかけて存在する複数の空洞で、空気の流れを整えたり、呼吸を助けたりする役割を担っています。
この空洞が風邪などの細菌やウイルス感染、またはアレルギーや刺激物によって炎症を起こすことで、鼻詰まりや痛みなどの症状が現れるようになります。
副鼻腔炎には急性と慢性があり、急性副鼻腔炎は数日から数週間程度で改善することが多いですが、慢性副鼻腔炎になると症状が数ヵ月以上続く場合があります。
慢性化すると、日常生活に支障のある不快感を伴うことがあります。
◎その他、副鼻腔の役割と炎症が与える影響
副鼻腔は、空気を温めたり加湿したりする機能を持つだけでなく、発声時に声を共鳴させる役割も担っています。
しかし、副鼻腔が炎症を起こすと、この機能が低下します。
また、痛みや頭重感といった症状が全身の体調にも悪影響を与えます。
■副鼻腔炎とインプラント治療の関係性
◎上顎の解剖学的特性
インプラント治療と副鼻腔炎の関係は、主に上顎の特性によります。
上顎の骨は下顎よりも薄く、上顎の奥歯を支える部分が副鼻腔に非常に近い位置にあります。
このため、上顎にインプラントを埋め込む際に副鼻腔との距離が問題となる場合があります。
骨が十分に厚みを持っていない場合、インプラントが副鼻腔に近すぎたり、突き抜けてしまったりすると副鼻腔炎の原因となる場合があります。
◎インプラントが原因となるケース
インプラント治療が副鼻腔炎を引き起こす原因の一つに、インプラントの位置の問題があります。
インプラントが副鼻腔内に侵入すると、異物反応として炎症が発生します。
また、手術中に細菌が副鼻腔に侵入することで感染を引き起こし、副鼻腔炎が発生することもあります。
さらに、上顎に十分な骨量がない場合に行われるサイナスリフトと呼ばれる骨移植術や、インプラントのための骨造成術もリスク要因となります。
これらの手術が適切に行われない場合、副鼻腔の炎症や感染が発生する可能性があります。
インプラント周囲炎などの清掃不足によっておこることもあります。
◎もともと副鼻腔炎になりやすい方は注意
元々副鼻腔炎の既往がある方や、副鼻腔に軽度の炎症があった場合、インプラント治療が引き金となって症状が悪化することがあります。
■インプラントで副鼻腔炎にならないために
◎清掃をきちんと行う
インプラントを長持ちさせるためにも、日常的な口腔内の清掃が重要です。
特にインプラント周囲の清掃が不十分だと、細菌が繁殖しやすくなり、それが副鼻腔炎の原因になる可能性があります。
歯科医師や歯科衛生士の指導に基づいて、適切な歯みがき方法や清掃道具を選ぶことが大切です。
◎無理な治療計画を立てない
上顎の骨が薄い場合や骨量が足りない場合は、無理にインプラントを埋入せず、慎重に手術方法を選びましょう。
信頼できる歯科医師と十分に相談し、リスクを最小限に抑える治療計画を立てることが予防につながります。
【インプラントで副鼻腔炎になることもある】
インプラント治療は歯を失った場合のとても良い選択肢ですが、まれに副鼻腔炎といったリスクがあることも理解しておく必要があります。
上顎にインプラントを埋め込む場合、副鼻腔との距離を適切に保つことや、術後の清潔な環境を維持することが大切です。
症状が現れた場合は、早めに歯科医師や耳鼻科医に相談し、適切な対処を行いましょう。当院では事前にCTによる診断や、サージカルガイドなどを導入し、正確にインプラント体を埋め込むことができるように努めていますので、ご安心ください。
ご不安な点があれば、お気軽に歯科医師にご相談ください。