
総入れ歯のズレが気になり始めた方へ、全顎治療という選択肢
食事の途中で入れ歯が浮く、会話に集中しきれない――そんな悩みを抱えたまま我慢を重ねていませんか。愛知県内でも、長年使った総入れ歯の不具合をきっかけに、人工歯根(インプラント)を用いた全顎治療を検討される60代・70代の方が増えています。この記事では、総入れ歯と全顎治療の仕組みの違い、費用の目安、骨量や持病がある場合の考え方、通院の流れまでを順に整理します。 判断材料としてお役立てください。
この記事の要点まとめ
- 総入れ歯と人工歯根による全顎治療は、粘膜で支えるか骨で支えるかという構造の違いがあります
- 費用はオールオン4やオーバーデンチャーなど工法により異なり、医療費控除などの負担軽減策も検討できます
- 60代・70代でも全身状態の確認や骨量に応じた工夫により、通院と生活に配慮した計画が可能です
総入れ歯と全顎の人工歯根治療(インプラント)の構造・選択肢の違い
同じ「歯を補う」治療でも、支える土台がまるで違います。この構造の差を押さえておくと、費用や治療期間に開きが出る理由も見えてきます。
固定式と着脱式:仕組みと噛み心地の違い
総入れ歯は、歯ぐきの粘膜に床(しょう)を密着させ、吸着力で保持する着脱式の装置。噛む力は粘膜を介して顎の骨へ伝わるので力が分散しやすく、装置がわずかに動くこともあります。長く使ううちに顎の骨が痩せてくると当初の吸着が得にくくなり、ズレや外れやすさとして自覚されるケースも少なくありません。
対して人工歯根を用いた全顎治療では、顎の骨に埋入したチタン製の人工歯根が骨と結合し、その上に人工歯を装着します。土台が骨に支持されるぶん、噛む力は骨へ直接伝わる構造です。つまり、粘膜で支えるか骨で支えるか。ここが両者の根本的な違いといえます。
口腔の健康は全身の状態や食生活と深く関わることが指摘されており1、どちらを選ぶかは見た目だけの問題ではなく、これからの食事の楽しみ方にも関わってきます。
全顎治療の主な工法(オールオン4・オーバーデンチャー・ブリッジ)
全顎の治療法は、埋入する本数と固定方法によって大きく3つに分かれます。
- オールオン4:片顎あたり最少4本程度の人工歯根で、連結した人工歯を固定する固定式の方法。取り外しの手間がかからない構造を目指します。
- インプラントオーバーデンチャー:2〜4本の人工歯根に磁石やボタン状の装置を取り付け、入れ歯を着脱式のまま保持力を高める方法。装置を外して洗える点が特徴です。
- インプラントブリッジ:6〜8本以上を埋入し、複数のブリッジに分けて装着する方法。本数が増えるぶん、負担の分散を図りやすい構成になります。
固定式を望むのか、着脱式で清掃のしやすさを優先するのか。骨量やご予算、日々の手入れの得意・不得意によって、向いている方法は変わります。歯科医療の情報は公的機関や専門団体からも発信されているため3、複数の視点で情報を集めたうえでご相談いただくと理解が深まります。
人工歯根を用いた全顎治療の費用相場と内訳の目安

自費診療となる全顎治療では、総額がどこまで膨らむのかが大きな気がかりでしょう。内訳を分解して眺めると、金額の見通しが立てやすくなります。
工法別の費用相場(オールオン4・インプラントオーバーデンチャー)
一般的な目安として、オールオン4は片顎あたり約250万〜400万円、両顎では500万〜800万円程度とされています。インプラントオーバーデンチャーは埋入本数が少なく済むため、片顎あたり約80万〜200万円程度と、やや抑えた範囲に収まる傾向があります。
金額を左右するのは、主に次の要素です。
- 埋入する人工歯根の本数とメーカー
- 人工歯の素材(樹脂系かセラミック・ジルコニア系か)
- 骨造成や抜歯などの追加処置の有無
- 精密検査、ガイド作製、麻酔管理などの費用
当院では「ご予算に合わせて、治療計画のご提案をいたします」という姿勢でご相談を承っており、無料相談も実施しています。他院で見積もりを受けた方から、内容を確認したいというご相談をいただくことも少なくありません。総額だけでなく、何が含まれ何が含まれないのかを書面で確認しておくと、後々の行き違いを防ぎやすくなります。
治療費の負担を軽減する手段(医療費控除とデンタルローン)
自費診療であっても、機能回復を目的とした治療は医療費控除の対象になり得ます。1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告によって所得税・住民税の負担が軽くなる仕組みです。通院のための交通費が対象に含まれる場合もあるので、領収書や記録は保管しておきましょう。制度の詳細は税務署や公的機関の案内でご確認いただけます2。
もう一つの選択肢がデンタルローン。月々の支払いに分けることで、老後資金を一度に取り崩さずに済む点が利点です。ただし分割回数に応じた手数料がかかるため、総支払額を試算したうえで判断してください。
費用の話は遠慮せず、初回相談の段階で率直にお聞かせいただくほうが、現実的な計画を立てやすくなります。
60代・70代における身体的負担と顎の骨量に関する疑問
「この年齢で外科処置を受けられるのか」「骨が痩せていると言われたが対応できるのか」。ご相談の場で特に多いのが、この2つの問いです。
高血圧や糖尿病などの持病がある場合の手術対応
人工歯根の治療に、法律で定められた年齢の上限はありません。判断の軸になるのは実年齢よりも全身の状態で、血圧や血糖のコントロールが良好に保たれているかどうかが重要な確認事項となります。
高血圧の方は術中の血圧変動に配慮が要りますし、糖尿病の方は血糖値が高い状態が続くと傷の治りや感染への抵抗力に影響することが知られています2。骨粗しょう症の治療薬や、血液をさらさらにする薬を服用中の方も、同じく事前確認が欠かせません。当院では必要に応じて内科の主治医へ照会し、服薬状況や検査値を共有したうえで計画を組み立てています。お薬手帳をご持参いただけると、初回相談から具体的な話に進みやすくなります。
身体的なストレスを和らげる方法としては、静脈内鎮静法という選択肢もあります。点滴で鎮静剤を投与し、うとうとした状態のまま処置を進めるもので、緊張しやすい方や処置時間が長くなる場合に検討されます。当院はオペ室を備え、静脈内鎮静法にも対応。全身管理の観点から、術中はモニターで状態を確認しながら進めます。
長年の総入れ歯使用で顎の骨が少ない場合の対応策
総入れ歯を長く使っていると、噛む刺激が骨に伝わりにくくなり、顎の骨は徐々に痩せていく傾向があります。とはいえ、骨が少ないからといって治療の道が閉ざされるわけではありません。
工夫のひとつが傾斜埋入です。骨がしっかり残っている部位を選び、人工歯根を斜めに埋め込むことで、骨移植を行わずに支持を得ようとする考え方。オールオン4はこの発想を活かした方法にあたります。骨の厚みが不足する場合には、サイナスリフト、ソケットリフト、GBR(骨誘導再生法)といった骨造成を組み合わせる選択肢も。ただし治療期間が延びること、追加費用が生じることは、あらかじめご理解いただく必要があります。
いずれの判断にも、立体的な診断が欠かせません。当院では歯科用CTで骨の厚み・高さ・神経や上顎洞の位置を三次元的に把握し、口腔内スキャナー(iTero)による型取りデータと合わせて計画を検討します。「他院で骨が薄いと言われた」というご相談も愛知県内各地からいただいており、まずは検査結果を見ながらご説明する流れを大切にしています3。
通院期間の流れと治療中の生活・食事への配慮
「歯がない期間ができるのでは」という不安は、多くの方が口にされます。実際の流れを知っておくと、生活の段取りも立てやすくなります。
相談から完成・メインテナンスまでの全体の流れ
一般的な進み方は、①カウンセリング、②歯科用CTなどの精密検査と治療計画の説明、③必要に応じた前処置(抜歯・歯周治療)、④人工歯根の埋入手術、⑤仮歯での経過観察、⑥最終的な人工歯の装着、⑦定期メンテナンス、という順序です。
人工歯根が骨と結合するまでの待機期間を含めると、上顎で約4〜6ヶ月、下顎で約3〜4ヶ月が一つの目安。骨造成を伴う場合は、さらに数ヶ月加わることもあります。通院回数は工法や口腔内の状態で変わるので、初回の計画説明時に確認しておきましょう。
治療期間中の食事と「現在の総入れ歯」を仮歯として使う方法
治療中ずっと歯のない状態が続くわけではありません。オールオン4では、条件が整えば手術当日に仮歯を装着する方法が検討されます。また、いまお使いの総入れ歯を調整・改造し、治療期間中の一時的な装置として活用できる場合もあります。使い慣れた形態をそのまま利用できるため、発音や見た目の変化を抑えやすい点が利点です。
ただし手術後しばらくは、硬い物や粘り気の強い食品は控え、やわらかい食事から段階的に戻していく配慮を。骨と結合していく大切な時期ですので、お伝えした食事の目安は守っていただくようお願いしています。
人工歯根を長く保つためのインプラント周囲炎予防とケア
人工歯根そのものはむし歯になりませんが、周囲の歯ぐきや骨に炎症が起こるインプラント周囲炎には注意が必要です。歯周病と似た経過をたどり、進行すると人工歯根を支える骨が失われることがあります。
毎日の歯磨きに加え、歯間ブラシやスーパーフロス、洗口補助具を組み合わせた清掃が基本1。喫煙は歯ぐきの血流に影響するため、節煙・禁煙のご相談も歓迎します。そして3〜6ヶ月ごとの定期メンテナンスで、噛み合わせの微調整や専門的な清掃を受けることが長期の安定につながると考えられています。外科処置はゴールではなく、その後のメンテナンスまで含めて一つの治療。そう捉えていただきたいところです。
当院は「皆さんの幸せ」を目指し、完全担当医制で一貫した治療計画を立てる方針をとっています。愛知県内の遠方からご来院される方に向けた送迎の配慮もありますので、通院面のご不安もあわせてご相談ください。なお診療時間は平日9:00〜12:30/14:00〜18:30、土日は9:00〜14:30、祝日は診療の場合ありという体制です。
よくある質問
Q1. 歯を全部抜いて総入れ歯にしたいのですが、どうすればいいですか?
A. まずは残っている歯の状態を精密に診査するところから始まります。抜歯が避けられない歯と、保存を検討できる歯を見極めたうえで、総入れ歯・オーバーデンチャー・全顎の人工歯根治療といった選択肢をご説明します。抜いてしまうと元には戻せませんので、複数の案を見比べたうえで慎重にご判断いただくことをおすすめします。
Q2. 歯科で難しいとされる治療にはどのようなものがありますか?
A. 一概に順位付けはできませんが、骨量が乏しい状態での外科処置、複雑な根管治療、全顎にわたる噛み合わせの再構成などは、診断力と設備の両方が求められる分野とされています。歯科用CTやマイクロスコープなどを活用し、事前の情報を増やしたうえで計画を立てることが大切です。
Q3. オーバーデンチャーからオールオン4に変更することはできますか?
A. 既存の人工歯根の位置・本数・骨との結合状態によって判断が分かれます。追加で埋入することで固定式へ移行できる場合もあれば、現在の構成を活かした調整が向く場合もあります。お使いの装置の資料と、あらためての画像検査をもとにご相談ください。
Q4. 80代で総入れ歯を使っている方はどれくらいいますか?
A. 国の歯科疾患実態調査などでは、80歳以降で無歯顎(歯がまったくない状態)の割合が一定数みられると報告されています。ただ近年は残存歯数が増える傾向も示されており、年齢だけで選択肢が決まるわけではありません。
Q5. 手術に年齢の上限はありますか?
A. 制度上の上限は設けられていません。全身状態、服薬内容、通院を続けられるかどうかなどを総合的に確認したうえで判断します。ご不安があれば、まず検査と説明だけを受けていただくことも可能です。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth
2. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
3. 公益社団法人 日本歯科医師会 https://www.jda.or.jp/
愛知県立豊田西高校 卒業
国立鹿児島大学歯学部歯学科 卒業
医療法人小室会 小室歯科ステーション診療所 勤務
東岡崎ジョイ歯科開院
医療法人JOY 設立
株式会社ジョイ SONA DENTAL LABORATORY 設立
実習受け入れ実績:名古屋医療秘書福祉&IT専門学校(歯科助手実習)
社団法人日本健康寿命を伸ばす会 代表理事
オステムインプラント公認アドバイザー
大阪口腔インプラント研究会25期生
大森塾8期生
臨床歯科麻酔管理指導医
日本有病者歯科医療学会
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