Column 矯正治療の豆知識

手術が必要?大人の受け口はマウスピース矯正で治せるか解説

手術が必要?大人の受け口はマウスピース矯正で治せるか解説

大人の受け口、手術以外の選択肢を知りたい方へ


集合写真で下あごの突出感が気になった。子どもの頃に反対咬合を指摘されたまま、今に至っている。そんな悩みを抱えながら「大人になったら外科手術しかない」と考え込んでいませんか。実際には、原因が歯の傾きにあるのか、あごの骨格にあるのかで検討できる道は変わります。この記事では、マウスピース矯正を検討しやすい受け口の条件、費用と期間の目安、精密検査で確かめる内容を整理しました。愛知県で目立ちにくい方法を探している方の判断材料になれば幸いです。


この記事の要点まとめ


  • 歯の傾きによる受け口はマウスピース矯正を検討でき、骨格要因が強い場合は外科治療も視野に入ります。
  • 抜歯や研磨、ゴムかけ等でスペースを作り、日々の装着時間を守ることで噛み合わせを誘導します。
  • 費用は80万〜110万円台、期間は1年半〜3年程が目安で、終了後は保定の継続が大切になります。

大人の受け口はマウスピース矯正でどこまで整えられるのか

大人の受け口はマウスピース矯正でどこまで整えられるのか

受け口は歯科では「反対咬合」「下顎前突」と呼ばれ、上の前歯より下の前歯が前に出ている噛み合わせを指します。原因は大きく二つ。歯の傾きによるものと、あごの骨そのものの大きさや位置によるものです。どちらの要素が強いかで、検討できる治療方法が分かれます1


歯の傾きが原因の「歯性反対咬合」が適応しやすい理由


上下のあごの前後関係に大きなズレはないものの、上の前歯が内側に倒れていたり、下の前歯が外向きに傾いていたりして前後が逆転しているタイプ。これを「歯性反対咬合」と呼びます。動かす対象はあごの骨ではなく歯そのものです。マウスピース型装置は歯一本ずつに計画的な力を加えられるため、前歯の傾きを起こす、あるいは内側へ倒すといった調整と相性がよいと考えられています。


当院のインビザラインコンプリヘンシブも幅広い症例に対応する設計で、歯のガタガタや受け口、出っ歯が気になる方のご相談を受け付けています。とはいえ「歯性なら必ず対応できる」わけではありません。前歯の被さり具合(反対被蓋の量)が小さいこと、奥歯の噛み合わせが大きく崩れていないこと、あごの関節に強い症状がないこと。こうした条件を総合して判断していきます。見た目の印象だけで適応は決められず、精密検査による分類が出発点になります。


あごの骨格のズレが大きい重度症例で外科手術の検討が必要な境界線


一方、下あごの骨自体が前方に大きく成長している「骨格性下顎前突」では、歯を動かすだけで骨の位置関係を変えることはできません。歯だけを無理に傾けて見た目を合わせようとすれば、歯ぐきへの負担や後戻りにつながる可能性が指摘されています。


判断の目安となるのは、セファロ(頭部エックス線規格写真)で計測する上下のあごの前後差、下あごの角度、前歯の傾斜量など。骨格的なズレが一定の基準を超える場合には、外科矯正(下顎骨切り術など)を併用する計画が選択肢に入ります。顎変形症と診断され、指定された医療機関での治療条件を満たすときは保険適用となる制度もあるため、該当しそうな方は早めに確認しておくと計画を立てやすくなるでしょう1


また、受け口をそのままにしておくと、前歯で食べ物を噛み切りにくい、サ行・タ行の滑舌に影響が出る、奥歯や顎関節に負担が集中するといった機能面の課題が生じることもあります。見た目だけでなく機能の面からも、まず現状を把握しておくことをおすすめします。


手術を伴わずに前歯の噛み合わせを整える治療アプローチ


軽度から中等度の受け口では、下の前歯を後方へ動かす余地をどう作るかが計画の要になります。歯を並べ替えるには物理的なスペースが必要で、その確保方法によって治療中の負担感も変わってきます。


下の前歯を後方へ下げるスペースを作るIPR(歯の研磨処置)と抜歯の判断


スペースづくりの方法は主に二つ。一つがIPR(隣接面の研磨)で、歯と歯の接する面をごくわずかに整える処置です。1か所あたり0.2〜0.5mm程度が一般的な範囲とされ、エナメル質の厚みの中で行うため、必要量が限られている場合に選ばれます。IPRで確保できるスペースには上限があり、必要量が大きい症例では抜歯を含めた計画を検討します。


もう一つが抜歯を伴う計画です。下顎の小臼歯を抜いて後方への移動量を確保する方法、奥歯全体を後ろへ動かすために親知らずの抜歯を先行させる方法などがあります。どちらを選ぶかは、必要な移動量、歯を支える骨の厚み、口元の突出感、そして患者さんご本人の希望を合わせて決めていきます。抜歯には元に戻せない側面がありますから、当院では検査データをお見せしながら、複数案の違いにご納得いただいたうえで進める姿勢を大切にしています。


噛み合わせの前後関係を整える「顎間ゴム」の役割と装着時の工夫


受け口の治療では、上下のマウスピースに設けたフックへ小さな輪ゴムをかける「顎間ゴム(ゴムかけ)」を使う場面がよくあります。装置だけでは動かしにくい上下の前後関係に対し、ゴムの牽引力で噛み合わせの方向を誘導する役割です。


気になるのは見た目と生活への影響でしょうか。ゴムは直径5〜6mm程度、色も目立ちにくいものが中心ですが、大きく口を開けたときには視認される可能性があります。対面での打ち合わせや登壇が多い方には、食事や大切な場面の前後で着脱するタイミングをあらかじめ組み立てておく方法をご案内しています。ただし装着時間が短くなると計画どおりに進みにくくなるもの。1日20時間以上という装置の装着時間とあわせ、ゴムも指示された時間を確保できるかが治療の進み方を左右します。


なお治療の途中では、歯が移動する過程で一時的に特定の歯だけが強く当たる(早期接触)時期が生じることもあります。数週間で落ち着く場合が多いものの、違和感が続くようなら自己判断せず担当医へご相談ください1


大人の受け口治療にかかる費用目安と期間のスケジュール


矯正治療は原則として自由診療で、医療機関ごとに費用設定が異なります。受け口では前歯だけでなく奥歯の噛み合わせも含めて調整するため、全体矯正が基本の考え方になります。


全体矯正の費用相場とデンタルローンなど分割払いの選択肢


当院のマウスピース矯正では、全顎症例で990,000円、下顎のみの部分的な症例で660,000円といった治療費の実績を公開しています(治療期間は症例により約11ヶ月〜1年6ヶ月)。受け口は上下の前後関係を扱う都合上、全顎での計画になるケースが多く、総額はおおむね80万〜110万円台がひとつの目安です。ここに精密検査料、通院ごとの調整料、治療後の保定装置費用が加わる場合もあります。


一括での支払いが負担になるなら、デンタルローンや院内分割という方法もあります。たとえば総額99万円を60回払いにすると、金利条件によりますが月々2万円前後の負担感で計算できます。あわせて、噛み合わせの機能改善を目的とした矯正治療は医療費控除の対象となる場合があります。審美目的のみと判断されると対象外になるため、診断内容と領収書を保管し、税務署や税理士へ確認しておくと計画が立てやすくなります。


目安となる治療期間と通院ペース・後戻りを防ぐ保定の大切さ


大人の受け口の全体矯正では、1年半〜3年程度が期間の目安です。移動量が大きい症例や抜歯を伴う場合は、さらに長くなる傾向があります。通院は1〜3ヶ月に1回程度が中心で、ワイヤー矯正のように毎月の来院を必須としない点は、仕事と両立したい方にとって取り入れやすい特徴といえるでしょう。当院は9:00〜12:30/14:00〜18:30の診療、土曜・日曜は9:00〜14:30の時間帯です(祝日は診療の場合あり)。平日の来院が難しい方はご相談ください。


動かした歯は元の位置へ戻ろうとする性質を持っています。これが後戻りです。治療後はリテーナー(保定装置)を装着し、最初の1年程度は長時間、その後は就寝時中心へと段階的に移行するのが一般的な流れとされています1。保定期間は動的治療と同等かそれ以上を見込むケースもあり、整えた状態を保つには保定とメンテナンスの継続が欠かせません。


東岡崎ジョイ歯科が取り組む受け口の精密検査と診療の流れ

東岡崎ジョイ歯科が取り組む受け口の精密検査と診療の流れ

受け口の治療計画は、骨格性か歯性かの見極めから始まります。愛知県岡崎市の当院では、診断のための情報を立体的に集める体制を整えています。


歯科用CTと口腔内スキャナー(iTero)による骨格と歯並びの可視化


当院では歯科用CTを導入し、あごの骨の形態や厚み、歯根の位置、親知らずの状態などを三次元で確認しています。受け口では下の前歯を後方へ動かせる骨の余裕がどれだけあるかが計画を左右するため、平面のレントゲンだけでは読み取りにくい情報を補える点が診断に役立ちます。


あわせて口腔内スキャナー(iTero)を用い、粘土状の材料を使わずに歯並びを光学的にデータ化します。型取りが苦手な方の負担軽減につながるほか、取得した3Dデータをもとに歯の移動過程をシミュレーションでご覧いただけます。ご自身の歯がどの順序で動く計画なのかを画面で共有できるので、治療前のイメージのすり合わせもしやすくなります。検査結果によっては外科矯正の検討が妥当と判断されることもあり、その際は口腔外科担当医と連携しながら方針をご説明します1


仕事や生活リズムに合わせた治療計画の立案と初診相談のステップ


初診相談では、気になっている点のヒアリング、口腔内の確認、装置の特徴や想定される流れのご説明を行います。その後、精密検査(CT撮影、スキャン、写真、噛み合わせの記録)へ進み、診断結果と治療計画・費用を書面でお伝えするという段取りです。当院は完全担当医制を採り、患者さん一人ひとりに寄り添った治療計画を立案しています。担当が変わることで説明内容が食い違ったり、同じ話を繰り返したりする負担が生じにくい体制です。


対面業務が多い方には、装置の着脱タイミングやゴムの管理方法など、生活リズムに沿った工夫を具体的にご提案します。むし歯や歯周病がある場合はそちらの処置を優先し、矯正中の口腔ケアの方法もあわせてお伝えします。なお成長期のお子さんと大人では治療の考え方が異なりますので、家族で相談したい場合はご一緒にどうぞ2。疑問を持ち帰らずに済むよう、時間をとってご説明します。


よくある質問


Q1. 受け口は大人になっても矯正できますか?


A. 年齢そのものが治療の可否を決めるわけではありません。歯を支える骨や歯ぐきの状態が良好であれば、成人後でも歯を動かす治療は検討できます。ただし成長を利用できない分、骨格的なズレが大きい場合は外科矯正の併用を含めた計画になることもあります。まずは検査で現状を把握するところからです。


Q2. マウスピース型の装置だけで受け口は整えられますか?


A. 歯の傾きが主な原因の軽度〜中等度の症例なら、装置単独での計画を立てられる場合があります。一方、下あごの骨自体が大きく前方にあるタイプでは、装置だけで噛み合わせを十分に変えることは難しいと考えられています。適応の判断には、セファロやCTを含む精密検査が必要です。


Q3. 費用はどのくらいかかりますか?


A. 自由診療のため医療機関により異なりますが、全顎の矯正でおおむね80万〜110万円台が目安です。当院では全顎症例で990,000円、下顎のみで660,000円といった治療費の実績を公開しています。別途、検査料や保定装置の費用がかかる場合もあります。デンタルローンや分割払いのご相談も承ります。


Q4. 通院の頻度はどのくらいですか?仕事と両立できますか?


A. 目安は1〜3ヶ月に1回程度で、装置の交換はご自宅で進めていただきます。当院の診療時間は平日9:00〜12:30/14:00〜18:30、土曜・日曜は9:00〜14:30です(祝日は診療の場合あり)。ご都合に合わせた予約調整をご相談ください。


Q5. 治療後に元の歯並びに戻ることはありますか?


A. 歯には元の位置へ戻ろうとする性質があるため、保定装置(リテーナー)の装着が欠かせません。装着時間が短くなると後戻りが生じやすくなります。定期的なチェックを受けながら、指示された期間の保定を続けることが状態の維持につながります。


参考文献


1. 日本矯正歯科学会. 矯正歯科治療・咬合に関する学術情報. https://www.jos-jpn.org/

2. 日本小児歯科学会. 小児の歯科保健・小児歯科診療に関する情報. https://www.jspd.gr.jp/


荻野 一樹

歯科医師


東岡崎ジョイ歯科

理事長

荻野 一樹

▶ 監修者プロフィール

経歴
愛知県豊田市出身
愛知県立豊田西高校 卒業
国立鹿児島大学歯学部歯学科 卒業
医療法人小室会 小室歯科ステーション診療所 勤務
東岡崎ジョイ歯科開院
医療法人JOY 設立
株式会社ジョイ SONA DENTAL LABORATORY 設立
実習受け入れ実績:名古屋医療秘書福祉&IT専門学校(歯科助手実習)
資格・所属学会
エンジェルキッズ竜美丘園 園医
社団法人日本健康寿命を伸ばす会 代表理事
オステムインプラント公認アドバイザー
大阪口腔インプラント研究会25期生
大森塾8期生
臨床歯科麻酔管理指導医
日本有病者歯科医療学会