インプラント治療の豆知識 COLUMN

骨密度が低くても選べる?一回法・二回法の違いと判断基準を解説

骨密度が低くても選べる?一回法・二回法の違いと判断基準を解説

骨密度の指摘を受けてから、術式の違いが気になり始めた方へ


健康診断で「骨密度がやや低い」と言われ、抜けたままの奥歯をどうするか考え始めた——そんなタイミングで目にするのが「一回法」「二回法」という言葉です。手術が2回になるのか、通院がどれくらい増えるのか、判断がつきにくいところだと思います。ここでは手順・切開回数・治療期間の違いを整理し、骨の量や硬さ、全身状態から術式がどう判断されるのか、相談前に確認しておきたい検査項目まで順に見ていきます。


この記事の要点まとめ


  • 一回法は切開が1回で通院を見通しやすく、二回法は骨の状態や骨造成の併用時に検討されやすい術式です。
  • 術式の判断は全身の骨密度だけでなく、CT等で確認する顎の骨の量や硬さ、全身状態が目安となります。
  • 長期の生存率に術式による大きな差は少なく、希望や生活予定を含めて歯科医師と相談することが大切です。

一回法と二回法の基本的な違い(手順・切開回数・治療期間)

一回法と二回法の基本的な違い(手順・切開回数・治療期間)

インプラントの術式は、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋めたあと、土台(アバットメント)をつなぐ処置を同じ日に行うか、骨と結合してから改めて行うかで二つに分かれます。名前は手術の回数からきています。


一回法の手術の流れと治療期間の目安


歯ぐきを開いてインプラント体を埋め、連結部分を歯ぐきの上にわずかに出した状態で縫合します。外科処置はこの1回で区切りとなり、骨と結合するまでの治癒期間は症例によって差がありますが、目安としておおむね2〜6ヶ月程度とされることが多いようです。その後、型取りや光学スキャンで上部構造(人工歯)の製作へ進みます。歯ぐきを開く処置が1度で済むため、通院の見通しは立てやすい構成です。


二回法の手術の流れと治療期間の目安


一次手術でインプラント体を埋入し、歯ぐきで完全に覆って縫合します。3〜6ヶ月ほど待って骨との結合を確認できた段階で二次手術に進み、歯ぐきを小さく開いて土台を連結。歯ぐきの治りを1〜数週間みてから人工歯の製作に入ります。骨を増やす処置を併用する場合は、さらに数ヶ月が加わることもあります。


切開・縫合の回数と身体への負担の違い


切開と縫合は一回法が1回、二回法は2回。とはいえ二次手術は歯ぐきの一部を開く小さな処置で、局所麻酔下で行われることが多く、所要時間や通院回数は症例によって異なりますが、抜糸を含めた場合の通院が1〜2回増える程度で済むことが多いとされています。手術への緊張が強い場合は静脈内鎮静法が選択肢になりますが、術後にふらつきや眠気が残ることがあり、当日の運転は控える配慮が必要です。骨の条件が整っているケースでは、歯ぐきを大きく開かない方法(フラップレス)が検討されることもあります。


骨密度が低い場合の判断基準:骨の量・硬さ・全身状態でどう変わるか

骨密度が低い場合の判断基準:骨の量・硬さ・全身状態でどう変わるか

骨の量が少ない場合に二回法が選ばれやすい理由


埋入した直後のインプラント体は、骨と結合するまでの数ヶ月を動かない状態で過ごせるかどうかが分かれ目になります。骨の幅や高さに余裕がなく初期固定が得にくい部位では、歯ぐきで完全に覆う二回法のほうが、食事の圧力や歯ブラシの刺激、細菌の侵入から遮られた環境を保ちやすい。骨の条件が厳しいときに二回法が候補になりやすいのは、治癒中の環境を安定させやすいという理由によります。


骨造成(骨を増やす処置)を併用する場合の術式選択


上顎の奥歯では骨の高さが足りず、上顎洞の底を持ち上げて骨を補う処置(ソケットリフト、サイナスリフト)や、幅を補うGBRを併用することがあります。移した材料が落ち着くまで覆っておく必要があるため、この場合は二回法が選択されることが多いとされています。上顎洞底を歯冠側から挙上してインプラントを埋入した臨床試験をまとめた報告では、良好な生存率が示されています2。ただし骨の状態や術式の詳細によって結果は変わり、一律の見通しを約束できるものではありません。


骨密度の低下や全身疾患がある場合に確認しておきたい検査項目


歯科用CTでは、骨の幅と高さに加えて骨の硬さの目安、上顎洞や下顎を走る神経の位置まで立体的に確認できます。あわせて、骨密度検査(DXA)の結果、骨吸収抑制薬(ビスホスホネート製剤など)の服用歴、糖尿病の血糖コントロール状況、喫煙習慣は、術式の選択と治癒期間の見積もりに関わってきます。健康診断の結果票とお薬手帳を持参すると、初回の相談から具体的な話に進みやすくなります。


一回法・二回法それぞれの誤解と知っておきたい注意点


「骨密度が低くても一回法を選べる」は誤解?よくある勘違い


腰や大腿骨で測る全身の骨密度と、顎の骨の局所的な量や硬さは、必ずしも同じ傾向を示しません。全身の数値が低めでも埋入部位の骨に厚みがあれば一回法が候補に入ることもあり、反対に骨密度が標準でも、抜歯後に骨が薄くなっている部位では二回法が妥当と判断される場合があります。術式は骨密度の数値だけでは決まらず、埋入予定の部位そのものを画像で確認してはじめて絞り込めるものです。レントゲン写真1枚だけで術式を決めてしまうのは避けたいところです。


インプラント体の構造(一体型・分離型)と術式の関連


インプラント体には、人工歯根と土台が最初から一体になっている一体型(ワンピース型)と、後から土台を組み合わせる分離型(ツーピース型)があります。一体型は構造上、土台が歯ぐきの外に出る形になるため一回法での使用が前提。分離型はどちらの術式にも対応でき、骨の状態に応じて選択の幅を残せます。使えるインプラント体の種類が術式を左右する場面もある、という点は押さえておくとよいでしょう。


前歯と奥歯で術式の使い分けが変わる理由


前歯は歯ぐきのラインや厚みが見え方に直結するため、歯ぐきの形を整える処置と組み合わせやすい二回法が選ばれることが少なくありません。奥歯では噛む力の大きさと骨の幅が判断材料になります。抜歯と同時に埋入する方法(抜歯即時埋入)や、早い段階から仮歯を使う考え方(即時荷重)は、骨と歯ぐきの条件がそろった限られた場面で検討されるもので、希望すれば常に選べるわけではありません。


術式による治療成績への影響と歯科医師に確認すべきこと


一回法・二回法で成功率に差はあるのか


術式そのものによる長期の生存率の差は大きくないとする見方が一般的で、骨の量や硬さ、全身状態、術後の清掃状態といった条件の影響のほうが大きいと考えられています。比較研究を読むときは、観察期間の長さや「再治療」の定義がそろっているかを見る必要があります。背景条件の異なるグループ同士でも臨床成績が近い値になる例は医科領域でも報告されており、数字だけを並べて優劣を決めない姿勢が求められます。


術式は自分の希望で選べるのか、検査結果で決まるのか


骨の量や初期固定の得やすさ、骨造成を併用するかどうかは医学的な判断が先に立ちます。一方で、通院回数をどこまで抑えたいか、麻酔の方法をどうするか、仕事や家事の予定に合わせて手術日をいつに置くかは希望を反映しやすい部分。決められない領域と相談できる領域を分けて聞くと、話が具体的になります。


愛知県内で検査体制の整った歯科医院に相談する際の確認ポイント


歯科用CTによる撮影があるか、その画像を見ながら骨の状態を説明してもらえるか、術式の候補が複数示されるか、治療後のメンテナンス体制まで説明があるか。愛知県内は移動距離の幅が大きいため、手術後の再診や定期的な通院を続けられる場所かどうかも判断材料になります。医院によっては、担当医が一貫して治療計画を説明する体制(完全担当医制など)を取っている場合もあります。


なお費用について、インプラントは1本あたりおおむね30万〜50万円程度、骨を増やす処置を併用する場合はこれに加算される形で示されることが多いとされます。これは一般的な相場であり当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内します。実際の費用は医療機関によって異なります。インプラント治療は自由診療(公的医療保険が適用されない)で、腫れ・出血・感染、まれに神経の障害などのリスクがあり、治療後も定期的なメンテナンスを続ける前提の治療です。


事前に歯科医師へ確認しておきたい検査・質問リスト


  • 骨の状態:CTで見た埋入部位の骨の幅・高さ・硬さはどの程度か
  • 術式の理由:一回法・二回法のどちらを想定し、その根拠は何か
  • 骨造成の有無:必要な場合、期間と通院回数はどう変わるか
  • 持病と薬:骨吸収抑制薬や血糖の状態を踏まえた注意点は何か
  • 予定への影響:手術後に仕事や家事を控えたい期間の目安
  • メンテナンス:治療後の通院間隔と、記録の残し方

よくある質問


Q. 二回法の二次手術は痛みますか?

A. 二次手術は歯ぐきを小さく開いて土台を連結する処置で、局所麻酔下で行われます。一次手術より範囲が狭く、術後の痛みや腫れは軽めで済むことが多いとされますが、感じ方には個人差があります。処方された鎮痛薬で対応できる範囲かどうか、事前に目安を聞いておくと安心です。


Q. インプラントの一回法にはどんな注意点がありますか?

A. 連結部が歯ぐきの上に出た状態で治癒を待つため、その周囲の清掃が不十分だと炎症が起こりやすくなります。骨の量が乏しい部位では初期固定が得にくく、適応となりにくい場合も。歯ぐきの形を細かく整えたい部位では、二回法のほうが調整しやすいこともあります。


Q. 骨密度が低いと言われましたが、保険は使えますか?

A. インプラント治療は原則として自由診療で、公的医療保険の対象外です。腫瘍や外傷による顎の広範囲の欠損など、限られた条件で保険適用となる制度はありますが、骨密度の低下そのものが適用理由になるわけではありません。現行制度での取り扱いは相談時に確認してください。


Q. 医療費控除はどのくらい戻ってきますか?

A. 戻る額は「支払った医療費のうち一定額を超えた部分」に所得税率をかけた金額が目安で、所得や家族全体の医療費によって変わります。治療費の領収書と通院の交通費の記録を残しておくと申告時に役立ちます。具体的な計算は国税庁の案内や税務署でご確認ください。


Q. 手術後、仕事や運動はいつから戻せますか?

A. デスクワーク中心であれば翌日から戻せる方もいますが、強い力のかかる運動や飲酒、喫煙は腫れや治りに影響するため一定期間控える指示が出ます。静脈内鎮静法を使った日は運転を避ける必要があるため、帰宅方法も含めて事前に決めておくとよいでしょう。


参考文献


2. Kadkhodazadeh M, Alimardani Y, Azadi A, et al. Clinical outcomes of implants placed with transcrestal maxillary sinus elevation: a systematic review and meta-analysis. The British Journal of Oral & Maxillofacial Surgery. 2024. PMID: 39098575 / DOI: 10.1016/j.bjoms.2024.05.006


荻野 一樹

歯科医師


東岡崎ジョイ歯科

理事長

荻野 一樹

▶ 監修者プロフィール

経歴
愛知県豊田市出身
愛知県立豊田西高校 卒業
国立鹿児島大学歯学部歯学科 卒業
医療法人小室会 小室歯科ステーション診療所 勤務
東岡崎ジョイ歯科開院
医療法人JOY 設立
株式会社ジョイ SONA DENTAL LABORATORY 設立
実習受け入れ実績:名古屋医療秘書福祉&IT専門学校(歯科助手実習)
資格・所属学会
エンジェルキッズ竜美丘園 園医
社団法人日本健康寿命を伸ばす会 代表理事
オステムインプラント公認アドバイザー
大阪口腔インプラント研究会25期生
大森塾8期生
臨床歯科麻酔管理指導医
日本有病者歯科医療学会