インプラント治療の豆知識 COLUMN

骨が薄い方向け|オールオン4と個別埋入の違いを本数費用で解説

骨が薄い方向け|オールオン4と個別埋入の違いを本数費用で解説

骨が薄いと言われた方が、まず整理しておきたい2つの選択肢


CT撮影のあとに「顎の骨がやや薄くなっています」と告げられると、その場では飲み込めないまま帰ることになりがちです。人工歯根を全体で支えるオールオン4と、失った部位ごとに埋め込む個別埋入。名前は知っていても、埋入本数や費用の考え方、通院回数がどう違うのかまで聞ける機会は多くありません。この記事では両者の仕組みを本数・費用・治療期間という三つの軸で整理し、骨の状態や残っている歯の数によって何が検討材料になるのかを解説します。相談の場で何を質問すべきかを絞り込む材料として使っていただける内容です。


この記事の要点まとめ


  • オールオン4は少数の人工歯根で片顎を支え、個別埋入は欠損部ごとに埋入する設計です。
  • 費用は片顎単位と1本ごとの積算で異なり、骨造成の有無で通院回数や期間も変わります。
  • 部位ごとの骨量や残存歯を立体的に把握し、通院負担も考慮して方針を検討できます。

オールオン4と個別埋入は埋入本数の仕組みが根本的に異なる

オールオン4と個別埋入は埋入本数の仕組みが根本的に異なる

同じインプラント治療でも、この二つは「何本埋めるか」以前に、支え方の設計思想が違います。構造から順に見ていきましょう。


オールオン4は4本の人工歯根で片顎全体を支える仕組み


片顎の歯をほとんど失った状態に対し、骨の厚みが比較的残っている前方部を中心に4本前後の人工歯根を埋め込み、その上に連結した歯列を固定する方法です。奥側の2本は斜めに角度をつけて埋入することが多く、骨の薄い部位を避けながら支点の間隔を広げる設計になっています。傾斜埋入と軸方向埋入を組み合わせた全顎固定性の治療は、3年以上の追跡調査でいずれも高い生存率が報告されています1。本数を増やすのではなく、埋入する位置と角度で支えるという発想が、この方法の中心にあります。


個別埋入は失った歯の本数に応じて1本ずつ埋め込む仕組み


欠損している部位ごとに人工歯根を埋め、それぞれに土台と被せ物を装着していく方法です。奥歯が2本ないなら2本、3本なら3本というように、失った位置と数に合わせて計画します。隣の健康な歯を削らずに済むこと、1本ずつ独立しているため清掃用具を通しやすいことが構造上の特徴です。残っている歯がまだ多い部分的な欠損では、こちらが検討されるのが一般的とされています2。


骨造成が必要になるかどうかの分かれ目


個別埋入は原則として「歯があった場所」に埋めます。そのため上顎の奥歯のように骨の厚みが減りやすい部位では、サイナスリフトやGBRなどの骨造成を先に行う計画になることがあります。対してオールオン4は骨の残っている部位を選んで角度をつけるため、骨造成を回避できる場合があります。ただし骨の吸収が進んだ上顎では、上顎洞を通過させる術式などより難度の高い方法が検討されることもあり、適応は細かく分かれます3。つまり骨造成の要否は、顎全体ではなく部位ごとの厚みで決まるということです。


費用の内訳と治療期間・通院回数の違いを数字で整理


数字を並べる前に前提をひとつ。インプラント治療は自由診療で、公的医療保険が適用されません。以下に挙げる金額は一般的な相場であり、当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内します。


オールオン4は片顎あたりのパッケージ費用になりやすい


人工歯根の本数が少なくても片顎全体を一体の構造物で支えるため、費用は「1本いくら」ではなく片顎単位で設定されることが多い方法です。医療機関によって設定額に差があり、片顎でおよそ200万〜400万円程度と案内されることもあります。これは一般的な相場であり当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内します。手術・人工歯根・連結した上部構造・仮歯までを含めた内容として提示されることもあれば、最終的な上部構造を別に見積もる形式もあります。何が含まれ、何が別途なのかを見積書の段階で確認しておくと比較しやすくなります。


個別埋入は歯の本数分だけ費用が積み上がる


個別埋入は、人工歯根・土台(アバットメント)・被せ物をそれぞれ1本分ずつ算定するため、1本あたりおよそ20万〜50万円程度と案内されることが多いとされますが、施設や術式によって差があります。こちらも一般的な相場であり当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内します。骨造成を併用する場合は部位や術式に応じて別途加算されるのが通例です。奥歯を複数本失っている状態では、4本、6本と増えるにつれて総額が片顎単位の費用に近づくこともあり、本数によって損得の感覚が変わってきます。


手術回数・通院回数・治療期間の目安


個別埋入は、骨造成を挟む場合、造成後の治癒に数ヶ月、その後の埋入から骨と結合するまでにさらに3〜6ヶ月程度をみるのが一般的です。埋入手術と土台を立てる処置が分かれると、手術が2回になることもあります。オールオン4は手術を1日にまとめやすく、通院回数を抑えやすい傾向があります。全顎固定性治療の長期成績をまとめた解析では、5年以上の追跡でも高い生存率が示されていますが4、これは適切な設計と術後管理が前提です。


手術に伴う主なリスク・副作用


いずれの方法も外科処置であり、次のような症状や不具合が起こる可能性があります。


  • 手術後の痛み(疼痛)、歯ぐきの赤み(発赤)、頬や歯ぐきの腫れ(腫脹)
  • 出血、皮膚や粘膜に内出血が出て青紫〜褐色に変色する(色素沈着として一時的に残ることがあります)
  • 唇・あご・舌のしびれや感覚の鈍さ(下あごの神経に近い部位では長引くことがあります)
  • 細菌感染、上あごの奥歯の部位では上顎洞(副鼻腔)の炎症
  • 人工歯根と骨がうまく結合せず、追加の処置や取り外しが必要になること
  • 使用後のインプラント周囲炎による歯ぐきの腫れや骨の吸収、上部構造の破損・ネジのゆるみ
  • 麻酔や処方薬による気分不良、アレルギー反応

症状の程度や続く期間は、全身状態や骨の状態、術式によって異なります。気になる変化があるときは自己判断せず、治療を受けた医療機関にご相談ください。


骨の状態と残っている歯の数で変わる選び方の目安


「骨が薄い」という一言だけでは、治療方針は決まりません。判断に使われている軸を分解してみます。


よくある誤解:骨が薄い=個別埋入は不可能ではない


CTで骨の菲薄化を指摘されると、もう全顎的な方法しか残っていないと受け止めてしまう方が少なくありません。ただし骨の厚みは顎全体で均一に減るわけではなく、歯を失ってからの期間や部位によって差が出ます。奥歯の部位だけ吸収が進み、前方部には十分な厚みが残っているという状態も珍しくありません。「骨が薄い」は部位ごとの評価であり、顎全体の判定ではないという点が、誤解の出発点になりやすいところです。以前受けた説明とネットの情報が食い違って見えるときも、どの部位の話をしているのかが揃っていないだけ、ということがあります。


残っている歯が数本かほとんど失っているかで分かれる目安


判断軸としてわかりやすいのは残存歯です。奥歯の一部だけを失い、前歯や反対側がしっかり機能している場合は、欠損部位を個別に補う計画が検討されやすくなります。一方、残っている歯がわずかで動揺も強く、近い将来に保存が難しいと見込まれる場合や、すでに無歯顎に近い場合は、片顎をまとめて支える設計が候補に入ります。口腔インプラント治療の適応は、骨量だけでなく残存歯の状態・噛み合わせ・全身状態を含めて総合的に検討されるものとされています2。長く部分入れ歯を使ってきた方は、支えにしてきた歯への負担も一緒に評価してもらうと方針が見えやすくなります。


歯科用CTで分かる骨の厚みと埋入可能な本数の関係


平面のレントゲンでは、骨の高さは見えても幅(厚み)までは読み切れません。歯科用CTを使うと骨を立体的に捉えられ、どの部位に何ミリの厚みがあり、神経や上顎洞との距離がどれくらいかを数値で把握できます。骨の吸収が強い上顎では、術式の選択肢そのものが骨の残り方で変わるという報告もあります3。どの部位に何本埋められるかは、CTのデータを見てはじめて具体的に話せるということです。説明に食い違いを感じたときは、画像を一緒に見ながら理由を聞くと納得しやすくなります。


手術当日の負担の違いと愛知県岡崎市で通院を続けやすくする工夫

手術当日の負担の違いと愛知県岡崎市で通院を続けやすくする工夫

家族の介護や仕事を抱えていると、費用以上に「何回通うのか」が現実的な判断材料になります。


手術当日に仮歯が入るオールオン4の即時荷重


オールオン4では、埋入した人工歯根に手術当日または数日以内に仮歯を連結する即時荷重が行われる場合があります。歯のない期間が短く済むため、日常生活への影響を抑えやすい設計です。傾斜埋入を含む全顎固定性治療の即時荷重については、複数の研究をまとめた解析で良好な生存率が報告されています41。ただし骨の硬さや初期固定の状態によっては、即時荷重を見送る判断もあります。また、手術当日から数日は腫れや痛みが出やすく、食事の内容に制限がかかる期間があります。


個別埋入で手術が複数回に分かれるケース


骨造成を先行させる場合、造成の処置と人工歯根の埋入が別日になります。埋入本数が多いときに左右で日程を分けることもあり、その分だけ通院の山が増えます。治療期間が延びやすいのは本数そのものより、骨造成を挟むかどうかというのが実務上の感覚です。手術の回数が増えれば、そのつど腫れや内出血などの術後症状が生じる可能性もあります。


愛知県岡崎市で介護や仕事と両立しながら通う際の目安


愛知県内で通院距離が長い方ほど、1回あたりの所要時間と間隔を先に確認しておくと予定が立てやすくなります。手術日は前後に余裕をみる、結合を待つ期間は受診間隔が空くといった流れを把握しておけば、付き添いの予定とも重ねやすくなります。担当医を固定する体制を取る医療機関では、同じ説明を何度もやり直す負担が生じにくいこともあります。


術後のお手入れとトラブル時の対応の違い


個別埋入は1本ずつ独立しているため清掃用具を通しやすく、不具合が起きた部位だけを扱いやすい構造です。連結した構造物は、内側の清掃に専用の器具や慣れが要ります。いずれの方法でも、インプラント周囲炎を防ぐための定期的なメンテナンスが長期的な経過を左右します。清掃が行き届かないと歯ぐきの腫れや出血、骨の吸収が進み、人工歯根の除去が必要になることもあります。埋入して終わりではなく、通い続ける前提で計画を組むことが何より現実的な備えになります。


よくある質問


Q1. 骨が薄いと指摘されましたが、相談前に用意しておくものはありますか。

A. 他院で撮影したレントゲンやCTの画像データ、受けた説明の内容をメモしたもの、現在服用中のお薬の情報があると話が進みやすくなります。骨の評価は部位ごとに異なるため、どの部位について指摘されたのかを確認しておくと、説明の食い違いも整理しやすくなります。


Q2. インプラント治療で医療費控除はどのくらい戻ってきますか。

A. 戻る金額は所得税率によって変わります。おおまかには「(年間の医療費−保険金等で補填される額−10万円)×所得税率」が還付の目安で、住民税の軽減も別に生じます。たとえば所得税率10%の方が年間100万円の医療費を支払い、保険金等の補填がない場合、医療費控除額はおよそ90万円となり、これに税率を掛けた9万円程度が所得税の軽減額の一例として挙げられます。ただし実際の還付額は他の所得控除の有無や上限額、控除の仕組みによって変わるため、詳細は税務署や国税庁の案内でご確認ください。


Q3. 通院回数を減らしたいのですが、希望は伝えてよいものでしょうか。

A. 遠慮なくお伝えください。介護や仕事の都合で来院できる曜日が限られる、1回の時間を長くしてでも回数を抑えたい、といった条件は治療計画の立て方に直接関わります。早い段階で共有いただくほど、無理のない日程を組みやすくなります。


Q4. 治療後のお手入れはどのくらい手間がかかりますか。

A. 毎日のケアに加えて、定期的な受診でのチェックと清掃が必要になります。間隔は口腔内の状態によって異なり、数ヶ月ごとに設定されることが一般的です。お手入れを続けられるかどうかは、治療方法を選ぶ段階から考慮に入れる要素になります。


Q5. 持病があっても検討できますか。

A. 糖尿病や骨粗しょう症、血液をサラサラにするお薬の服用など、全身状態によって注意すべき点が変わります。こうした状態では傷の治りが遅れたり、感染や骨との結合が得られにくくなったりする可能性があります。治療そのものが検討できない、と一律に決まるわけではありませんが、主治医との連携が必要になる場合があります。まずは服薬内容を含めてご相談ください。


参考文献


1. Del Fabbro M, Pozzi A, Romeo D, et al. Outcomes of Fixed Full-Arch Rehabilitations Supported by Tilted and Axially Placed Implants: A Systematic Review and Meta-Analysis. The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants. 2022. PMID: 36170316 / DOI: 10.11607/jomi.9710

2. 日本口腔インプラント学会. https://www.shika-implant.org/

3. Gianfreda F, Antonacci D, Mastrangelo F, et al. Indications, techniques and complications associated with full-arch rehabilitation using trans-sinus implants: A systematic review and prevalence meta-analysis. International Journal of Oral Implantology. 2025. PMID: 40358434

4. Shao WH, Chen R, Wang S, et al. All-on-4 and All-on-6 implant-supported fixed prostheses for the edentulous jaw: a systematic review and meta-analysis. International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. PMID: 42031576 / DOI: 10.1016/j.ijom.2026.04.002


荻野 一樹

歯科医師


東岡崎ジョイ歯科

理事長

荻野 一樹

▶ 監修者プロフィール

経歴
愛知県豊田市出身
愛知県立豊田西高校 卒業
国立鹿児島大学歯学部歯学科 卒業
医療法人小室会 小室歯科ステーション診療所 勤務
東岡崎ジョイ歯科開院
医療法人JOY 設立
株式会社ジョイ SONA DENTAL LABORATORY 設立
実習受け入れ実績:名古屋医療秘書福祉&IT専門学校(歯科助手実習)
資格・所属学会
エンジェルキッズ竜美丘園 園医
社団法人日本健康寿命を伸ばす会 代表理事
オステムインプラント公認アドバイザー
大阪口腔インプラント研究会25期生
大森塾8期生
臨床歯科麻酔管理指導医
日本有病者歯科医療学会