インプラント治療の豆知識 COLUMN

手術当日の仕事や車の運転への影響、麻酔別に確認したい再開時期

手術当日の仕事や車の運転への影響、麻酔別に確認したい再開時期

歯科手術当日の運転と仕事復帰を判断する目安


歯科の手術の日に車を運転してよいか、いつ仕事に戻るかは、使う麻酔の種類と、仕事でからだにかかる負担を分けて考えることが大切です。とくに静脈内鎮静法や全身麻酔を使う日は、処置のあとも眠気や注意力の低下が残りやすいため、当日の運転は控えて、送迎や電車・バスを手配しておくのが基本です。


この記事では、局所麻酔・静脈内鎮静法・全身麻酔それぞれで帰り方がどうちがうかと、事務の仕事や機械の操作、力仕事など、仕事の内容に合わせていつから戻るかの考え方をまとめます。予約の前に歯科医院へ伝えておきたいこともまとめましたので、職場やご家族との予定づくりに役立ててください。


この記事の要点まとめ


  • 使う麻酔によって、運転をはじめてよいめやすはちがいます。静脈内鎮静法や全身麻酔を使った日は、車の運転をひかえます。
  • 仕事に戻る時期は、仕事の内容と手術のあとの体調を見ながら決めます。
  • 予約のときに仕事の内容や通勤のしかたを伝え、帰り方と休みを準備しておきます。いつから再開するかは歯科医師に確かめます。

麻酔の種類で変わる手術当日の運転と付き添いの扱い

麻酔の種類で変わる手術当日の運転と付き添いの扱い

歯科手術を受ける際、当日に自分で車を運転して帰れるかどうかは、主にどの麻酔を使うかによって大きく変わります。「処置が終わって麻酔が切れれば普段どおり動ける」と思われがちですが、薬の作用や処置後の体調変化を踏まえた計画が求められます。


局所麻酔のみの場合も当日の運転は控えめに考える


局所麻酔は意識がはっきりした状態で処置を受けるため、麻酔薬そのものによる強い眠気は起こりにくいとされています。しかし、処置後の出血や痛み、治療中の緊張からくる疲労、さらには処方された鎮痛薬などの影響が重なることがあります。


そのため、局所麻酔のみであっても手術当日の長距離運転や、業務としての運転は控える判断も大切です。また、麻酔のしびれが2〜3時間ほど残る間は、唇や頬の内側を噛みやすく、熱い飲み物でやけどをするおそれもあるため、食事や会話にも配慮しましょう。


静脈内鎮静法を使った日は運転せず付き添いや送迎を手配する


点滴から鎮静薬を投与する静脈内鎮静法は、うとうとと眠っているようなリラックスした状態で処置を受けられる方法です。以前の抜歯で器具の音や振動、強い緊張がつらかった方にとって、精神的な負担を和らげる選択肢となります。


一方で、処置が終わって意識が戻った後も、しばらくは判断力や注意力の低下が残る可能性があります。短時間作用型の鎮静薬を用いた日帰り処置であっても、投与後は運転能力への影響がみられることが報告されており、通常の睡眠をとった後や、処置時間によっては24時間以上運転を控えるよう案内されます1。当日は自分で車や自転車を運転せず、家族の送迎やタクシー、公共交通機関で帰宅する準備を整えておきましょう。


なお、歯科手術における静脈内鎮静法は公的医療保険が適用されない自由診療となるケースが多く、一般的な費用相場は5万〜10万円程度です(記載した金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関により異なります)。主なリスク・副作用として、処置後の眠気、ふらつき、血圧の変動、吐き気などが挙げられます。


全身麻酔の場合は翌日以降の運転可否も個別に確認する


全身麻酔は意識を完全に失った状態で手術を行うため、身体への影響が大きく、回復までにより多くの時間を要します。長時間にわたる手術や作用の長い麻酔薬を使用した場合は、24時間以上経過しても運転が控えめとされる考え方があります1。


手術当日だけでなく、翌日以降も車の運転や仕事を控えるよう指示されるケースがあるため、事前のスケジュール調整が不可欠です。全身麻酔での処置を希望する場合は、その歯科医院で対応が可能か、または入院設備のある連携医療機関への紹介になるかを予約前に確認しておきましょう。


麻酔別に見る当日の運転・付き添い・仕事復帰の目安一覧表


麻酔の種類ごとに、手術当日の行動制限や復帰の目安を整理しました。実際の再開時期は手術の規模や体調によって個人差があるため、担当医の指示に従ってください。


麻酔の種類当日の運転付き添いの必要性当日の事務作業当日の運転・力仕事を伴う業務翌日の再開確認
局所麻酔のみ短距離でも控えめに考える原則不要(体調により検討)処置が軽度なら相談可控えるのが目安痛みや出血が落ち着いていれば可
静脈内鎮静法不可(送迎や公共交通機関を利用)帰宅時の付き添い・送迎を推奨休養を優先不可眠気やふらつきがなければ相談可
全身麻酔不可(入院または送迎が必要)必須不可(休養が必要)不可医療機関の指示に従い個別に判断

表に示した内容はあくまで一般的な目安です。同じ局所麻酔でも、まっすぐ生えている歯の抜歯と、骨を削る処置を伴う埋伏歯の抜歯や複数本のインプラント手術では、術後の身体的な負担が異なります。


ポイント

静脈内鎮静法や全身麻酔を使う日は当日の運転ができません。局所麻酔のみの場合も、疲労や痛みを考慮してゆとりのある帰宅手段を選んでおくと落ち着いて過ごせます。


手術当日の仕事への影響は業務内容ごとに分けて考える

手術当日の仕事への影響は業務内容ごとに分けて考える

歯科医院で「手術の翌日からは仕事に戻れますよ」と説明を受けたとしても、それがすべての職種にそのまま当てはまるとは限りません。手術の侵襲(身体への負担の大きさ)によって術後の痛みや回復の経過には差が生じるため2、ご自身の業務内容を具体的に分けて復帰時期を検討しましょう。


座って行う事務作業なら当日午後の復帰を相談できる場合も


局所麻酔のみで処置時間が短く、抜歯や手術の範囲が小さい場合は、座って行うデスクワーク中心であれば当日午後や翌日からの復帰を相談できるケースがあります。パソコン作業や書類整理など、身体を大きく動かさない業務であれば、血行が過度に良くなる心配が少ないためです。


ただし、事務職であっても長時間の会議で話し続けたり、電話対応が多かったりすると、傷口が開きやすくなったり痛みが出たりすることがあります。また、職場までの通勤手段に車の運転が含まれるかどうかも含めて、無理のない範囲で判断しましょう。


機械操作や重量物を扱う作業は血のめぐりがよくなる動きに注意


工場での設備点検や機械操作、建設作業、重い荷物を持ち運ぶ力仕事などは、事務作業とは分けて考える必要があります。重い物を持っていきむ動作や、下を向いて前かがみになる姿勢が続くと、頭部の血圧が上がって傷口から再び出血したり、翌日の腫れや痛みが強まったりするきっかけになります。


また、抜歯やインプラントでは、手術のやり方や範囲の大きさによって、痛みが落ち着くまでの日数がちがってきます。注意力やこまかい動きが必要な機械の操作は手術の日を避け、翌日以降も痛みのぐあいや薬を飲んでいるかを見ながら、少しずつふだんの仕事へ戻す計画を立てましょう。


工場間の移動や社用車など運転を伴う業務は再開時期を別に決める


自宅から職場までの通勤だけでなく、勤務中に工場間を移動したり、営業で社用車を運転したりする業務がある場合は、その再開時期を別に決めておく必要があります。運転をまた始める時期は、人によって幅があります。痛みの程度や薬の影響をふまえて、慎重に決めることが大切です。


処置後の違和感や痛みが気になって運転への集中力が削がれることも考えられます。手術当日はもちろん、翌日以降も数日間は運転を伴う業務を同僚に振り替えてもらうか、点検や事務作業を中心に組み立てられないか、事前に職場へ相談しておくと当日あわてずにすみます。


「翌日から大丈夫」と言われても再開を見送りたい体調のサイン


前もって「次の日から仕事や運転をしてよい」と言われていても、手術の日の夜や次の朝の体調によっては、再開を見送ることもあります。出かける前に、次のことを確かめてみてください。


  • 眠気やふらつきが残っている:麻酔薬の影響や睡眠不足で頭がぼんやりしている
  • 出血が続いている:ガーゼを噛んでもじわじわと血がにじみ、唾液が赤く染まる
  • 強い痛みや腫れがある:顔の腫れが大きく、口を開けにくい、ズキズキと痛む
  • 薬による体調変化がある:処方された鎮痛薬や抗菌薬を飲んだ後に眠気やめまいを感じる

これらのサインがひとつでも当てはまる場合は、車の運転や機械操作の再開を延期し、歯科医院へ連絡して指示を仰いでください。出勤する場合も、家族に送迎を頼む、勤務時間を短縮するなど、身体への負担を減らす工夫を取り入れましょう。


ポイント

「仕事に戻れる」の基準は業務内容で変わります。力仕事や運転、機械操作を伴う場合は、事務作業よりも余裕をもった復帰スケジュールを組むようにしてください。


予約前に歯科医院へ伝えたいことと当日の帰宅手段の準備


手術の日にあわてないためには、予約を入れる前の相談のときに、ご自身の働き方や家の事情を歯科医院へ伝えておくことが近道です。前もって伝えておけば、無理のない手術の日どりや帰り方を一緒に考えやすくなります。


仕事内容・通勤方法・希望する麻酔は予約の段階で伝える


初診の相談や手術の予約をする際は、お口の症状だけでなく、日常生活や仕事の環境についてもスタッフや歯科医師へお伝えください。具体的には、普段の通勤手段が車かどうか、仕事中に運転や機械操作、重量物を扱う作業があるか、そして静脈内鎮静法などの麻酔を希望するかどうかです。


親知らずの抜歯やインプラントなどの外科処置では、事前に歯科用CTを用いて歯の根の形や神経・血管の位置関係を立体的に確認することで、処置にかかる時間や術後の腫れやすさの見通しを立てることができます。また、服用中の薬や持病、手術後にどうしても外せない職場の稼働予定や家庭の行事がある場合も、あらかじめ伝えておくことで適切な日程を選びやすくなります。


車移動が多い愛知県でも用意したい運転しない帰宅手段


愛知県のように日常の移動や通勤で自家用車を使う方が多い地域では、「歯科医院へも当たり前のように車で向かう」というケースが少なくありません。しかし、手術当日に急遽「今日は運転を控えてください」と案内されると、車を置いて帰ることになり、ご家族の勤務や保育園のお迎えの予定を急に変更しなければならなくなります。


こうした事態を避けるため、手術当日は最初から自分で運転しない移動手段を確保しておきましょう。ご家族に送迎を頼む場合は、処置後の止血確認や薬の説明、麻酔からの回復で予定より時間が延びることもあるため、迎えの時間に余裕をもたせておくと落ち着いて対応できます。また、駅から歩いて通える歯科医院や、タクシーを手配しやすい環境かどうかも事前に確かめておくと、一人での来院・帰宅も計画しやすくなります。


休暇は手術当日だけでなく翌日の業務調整も含めて決める


職場で休暇の申請や業務の調整を行う際は、手術当日だけでなく翌日の働き方も含めて考えておくと余裕が生まれます。たとえば、午前に手術を受けて午後からすぐ現場に戻るのではなく、手術当日は1日休暇を取り、翌日は座って行う書類作成やデータ入力などの事務作業を中心に切り替えるといった段階的な復職方法です。


腫れや痛みは、手術の当日だけでなく、翌日以降に強まることもあります。ご自身が担当する設備の稼働予定や繁忙期を避け、週末や連休の前日に手術日を設定するなど、万が一腫れが長引いた場合でも周囲に負担をかけにくい日程を選ぶのが賢明です。


どんな人にどの麻酔と休み方が向くかを相談して決める


ここまで見てきたように、手術の日の過ごし方に、決まったひとつの正解はありません。以前の抜歯でこわい思いをして、処置中の音や緊張に強い不安がある方は、静脈内鎮静法を選び、当日は休みを取ってご家族の送迎や電車・バスで帰る計画が向いています。一方で、処置への緊張が少なく、短い時間で済むことが多い抜歯などであれば、局所麻酔だけで行い、当日の午後や翌日の仕事を軽めにして乗り切る選び方もあります。


お口の状態や仕事の環境によって、一概にどちらが良いとは言い切れません。まずは歯科用CTなどの検査で手術の難易度や見通しを確認し、ご自身の働き方に合う麻酔と休みの取り方を歯科医師と相談して決めていきましょう。相談したからといってその場で治療を決断する必要はありませんので、まずは疑問や不安を整理するところから始めてみてください。


よくある質問


Q. 手術後、いつから車の運転をしてもいいですか?


A. 麻酔の種類と手術の内容、手術のあとの体調によってちがいます。静脈内鎮静法を使った日は車の運転を控えるよう案内されており3、全身麻酔の場合も当日は運転できません。


全身麻酔では次の日以降も控えるよう言われることがあるため、運転をはじめる日は手術を受けた医療機関に確かめてください。局所麻酔だけの場合も、痛みや疲れ、痛み止めによる眠気がないかを見て、当日は運転を控えるか慎重に決めてください。


Q. 手術後、何日後に運動や力仕事をしてもいいですか?


A. 抜歯した日から数日は、激しい運動や重い物を持ち上げる力仕事を控え、腫れや痛みが落ち着いてから少しずつ戻すのが一般的です。血のめぐりがよくなる動きは、出血や痛みのもとになるためです2。抜歯やインプラント手術の規模によっても回復のペースは変わるため、傷口の落ち着き具合を見ながら、再開する時期を担当医へ確認して段階的に戻しましょう。


Q. 手術の直前や直後に旅行や出張の予定を入れてもいいですか?


A. 手術の前の旅行は、体調をくずさない範囲であればかまいませんが、寝不足や疲れは手術のあとの治りに影響するため、前日はしっかり休んでください。手術の直後は、急な出血や強い腫れ・痛みが出ても、手術を受けた歯科医院ですぐに診てもらえません。そのため旅行や車での長い移動をともなう出張は、抜糸や消毒が終わってから予定を組むことをおすすめします。


参考文献


1. Telles JL, Agarwal S, Monagle J et al. Driving impairment due to propofol at effect-site concentrations relevant after short propofol-only sedation. Anaesthesia and intensive care. 2016. PMID: 27832555 / DOI: 10.1177/0310057X1604400602

2. 東京女子医科大学 歯科口腔外科. https://www.twmu.ac.jp/hospital/OMS/gen_wisdom_tooth.html

3. 名古屋で静脈内鎮静法なら – 覚王山の歯医者なら 愛知学院大学歯学部附属病院. https://hospital.dent.agu.ac.jp/dental/sedation

4. Elmér SE, Nygren JO, Lenander CE. A randomized trial of transanal hemorrhoidal dearterialization with anopexy compared with open hemorrhoidectomy in the treatment of hemorrhoids. Diseases of the colon and rectum. 2013. PMID: 23478616 / DOI: 10.1097/DCR.0b013e31827a8567

5. Burnham M, Wright A, Kane TJK 4th et al. When Do Patients Return to Driving After Outpatient Foot and Ankle Surgery? Hawai'i journal of health & social welfare. 2022. PMID: 35340939


荻野 一樹

歯科医師


東岡崎ジョイ歯科

理事長

荻野 一樹

▶ 監修者プロフィール

経歴
愛知県豊田市出身
愛知県立豊田西高校 卒業
国立鹿児島大学歯学部歯学科 卒業
医療法人小室会 小室歯科ステーション診療所 勤務
東岡崎ジョイ歯科開院
医療法人JOY 設立
株式会社ジョイ SONA DENTAL LABORATORY 設立
実習受け入れ実績:名古屋医療秘書福祉&IT専門学校(歯科助手実習)
資格・所属学会
エンジェルキッズ竜美丘園 園医
社団法人日本健康寿命を伸ばす会 代表理事
オステムインプラント公認アドバイザー
大阪口腔インプラント研究会25期生
大森塾8期生
臨床歯科麻酔管理指導医
日本有病者歯科医療学会