Column 矯正治療の豆知識

リテーナーの寿命は1〜5年、交換時期を見極めるひびや浮きのサイン

リテーナーの寿命は1〜5年、交換時期を見極めるひびや浮きのサイン

リテーナーの交換時期は使用年数だけでなく状態で判断する


リテーナー(保定装置)の交換時期は、使った年数の目安だけでなく、ひびや、つけたときの浮きといった状態から判断します。矯正で歯を動かした直後は、歯を支える骨がまだ落ち着いておらず、もとの位置に戻ろうとするため、リテーナーで歯並びを保つことが欠かせません1。この記事では、透明なマウスピース型などの種類や扱い方によって寿命が変わるわけと、小さなひびやフィット感の変化を見分ける手がかりをまとめます。自分の判断でつけるのをやめずに受診までに確かめたいことや、作り直しの流れ、毎日の洗い方までお伝えしますので、歯科医院へ相談するときの参考にしてください。


この記事の要点まとめ


  • 寿命は種類や扱い方で変わります。年数だけでなく、ひびや変形、つけ心地を歯科医院で見てもらいます。
  • 浮きやきつさは、装置の傷みや歯並びの変化が関係することがあります。つけ方を医院に相談しましょう。
  • 作り直しは診察と型取りのあとに進み、できあがるまで1〜2週間が目安です。洗い方と専用ケースでの保管も大切です。

リテーナーの寿命が幅広い理由と、交換時期の考え方

リテーナーの寿命が幅広い理由と、交換時期の考え方

リテーナーの寿命に幅があるのは、装置の形や素材、毎日の扱い方によって傷み方がちがうためです。使った期間は目安のひとつで、だれにでも同じ交換の期限があるわけではありません。


透明なマウスピース型・プレート型・固定式で異なる寿命の傾向


リテーナーの作り直しを検討する時期は、装置の種類によって異なります。使用状況による個人差はありますが、一般的な特徴は以下のとおりです。


装置の種類構造の特徴耐久性の傾向起こりやすい変化
マウスピース型透明な薄い樹脂で歯列全体を覆う噛む力や着脱の影響を受けやすい噛む力による摩耗、縁のひび、たわみ
プレート型表側のワイヤーと裏側の樹脂で支えるやや厚みがあり丈夫樹脂部分の欠け、金属部分のゆるみ
固定式前歯の裏側に細いワイヤーを接着する接着状態に左右される接着剤の外れ、ワイヤーの浮きや変形

透明なマウスピース型は薄い歯科用プラスチックで作られているため、毎日の着脱や噛みしめる力で少しずつすり減り、フィット感が変わりやすい特徴があります。一方、歯の裏側に接着する固定式は自分で外せない分、接着部分が外れたりワイヤーが浮いたりすることがあります23。どの装置であっても、使用期間だけで一律に決まるものではなく、状態に応じた確認が求められます。


装着時間・洗浄・保管・歯ぎしりの習慣で劣化の進み方が変わる


同じ透明なマウスピース型リテーナーを使っていても、日々の生活習慣によってひびや変形の起こりやすさは大きく変わります。たとえば、保定の初期で1日中装着している時期と、落ち着いてから夜間のみ装着する時期とでは、装置にかかる負担が異なります。


また、洗浄や保管の仕方も寿命を左右します。熱いお湯をかけて洗うと樹脂が熱で変形し、研磨剤入りの歯磨き粉でこすると表面に細かい傷がついて白く濁る原因になります。外した際に専用ケースへ入れずティッシュに包んで置くと、誤って上から物を置いて割ってしまうことも少なくありません。さらに、就寝中に歯ぎしりや食いしばりの習慣がある患者さんでは、奥歯の噛み合う面が早くすり減ったり、穴が開いたりしやすくなります。夜間のみの装着は日中の摩耗を避けられる一方、装着が遅れる日が続くと歯並びがわずかに動き、装着時の負担が増す可能性もあります。


よくある誤解:保定期間と装置の寿命は別に考える


「一定期間使ったから自動的に交換しなければならない」「保定期間が終わるまでは最初の1つで足りるはず」というのは、どちらもよくある誤解です。歯並びを安定させる保定期間と、装置そのものの寿命は分けて考える必要があります。


矯正の装置で歯を動かし終えたころは、歯のまわりの骨がまだ固まっておらず、リテーナーを使わないと歯がもとの位置に戻ろうとする(後戻りする)ことがあります1。後戻りを防ぐ期間は、歯を動かした期間と同じか、それより長くかかると考えられています4。そのため、この期間の途中で装置が傷んで作り直すことは珍しくありません。交換するかどうかは、年数だけではなく、装置の傷みぐあいと今の歯並びと合っているかを歯科医師が見て決めます。


ポイント

保定期間とリテーナーの寿命は別物です。使用年数だけで判断せず、装置の劣化や歯へのフィット感をもとに交換の要否を確認しましょう。


交換時期を見極めるサイン:ひび・浮き・変形と受診までの対応

交換時期を見極めるサイン:ひび・浮き・変形と受診までの対応

使用期間が短くても、装置に小さなひびや装着時の浮きが見られるときは、歯科医院へ相談するサインです。放置すると割れが広がったり、歯並びの維持に影響したりすることがあります。


縁の小さなひび・白い筋・穴は割れが広がる前の相談サイン


透明なリテーナーでは、洗浄中や着脱の際に小さな傷みに気づくことがあります。特にひびが入りやすいのは、指をかける装置の縁(フチ)や、前歯の先端が当たる部分、奥歯の溝の周辺です。


最初は数ミリの小さな亀裂や、樹脂に力がかかって白く濁った筋、噛み合わせ部分の小さな穴として現れます。この段階では装着できることも多いですが、毎日の着脱で同じ場所に力がかかると、ある日急に大きく割れてしまうことがあります。また、欠けた縁が歯ぐきや頬の内側に当たって傷ついたり、ひびの隙間に汚れがたまって臭いや着色の原因になったりします。洗うときは明るい場所で光にかざし、縁に引っかかりや白い筋がないかを確かめる習慣をつけましょう。


装着時の浮きは「装置の変形」か「歯並びの変化」か、見分ける手がかり


装着したときに以前より浮く感覚がある場合、原因として装置の変形・劣化と歯並びの変化(後戻り)の2つが考えられます。見分けるための手がかりはいくつかあります。


たとえば、特定の歯の周りだけが浮き、指で押し込んでもすぐに戻ってしまう場合や、逆に強いきつさを伴う場合は、装着時間の不足などで歯の位置がわずかに動いている可能性があります。一方で、全体的にゆるく感じる場合や、お湯で洗ったあとから急に合わなくなった場合は、装置自体のたわみや熱変形が疑われます。ただし、装置の劣化によって抑える力が弱まり、その結果として歯が動くというように、両方の要因が重なっていることも少なくありません。見た目だけでは判断が難しいため、歯科医院で歯列と装置の適合を診てもらうことが大切です。


修理で済む状態と作り直しが必要になりやすい状態の違い


装置に不具合が出たとき、修理で対応できるか作り直しになるかは種類と状態によって異なります。透明なマウスピース型は1枚の薄い樹脂シートを成型して作られているため、ひびや穴、熱による変形が生じると部分的な継ぎ足し修理が難しく、作り直しを検討するケースが多くなります。


これに対し、表側のワイヤーと裏側の厚い樹脂でできたプレート型は、樹脂のわずかな欠けやワイヤーのゆるみであれば、修理や調整で使える場合があります。歯の裏に接着する固定式では、ワイヤーが折れていなければ、外れた部分の接着剤を付け直す処置で対応できることがあります25。なお、固定式のワイヤーの種類によって、外れにくさにはっきりした差は見られないと報告されています2。また、洗浄しても落ちない強い着色や臭い、装着時の強い痛みがある場合も、無理に使い続けず相談の目安にしてください。


自己判断で装着をやめない:受診までの過ごし方と医院へ伝える内容


ひびや浮きを見つけたとき、自己判断でリテーナーを外したままにするのは避けましょう。保定装置を使わない期間ができると、歯が元の位置へ戻ろうとする動きが進み、いざ受診したときには装置がまったく入らなくなるおそれがあります3。ただし、割れた断面が鋭く粘膜に刺さる場合や、急に入らなくなり強い痛みが出る場合は無理に装着せず、速やかに歯科医院へ連絡して受診までの指示を仰いでください。


予約や問い合わせの際は、以下の項目を伝えると診察がスムーズに進みます。


  • 現在の装置の使用期間と種類(透明なマウスピース型など)
  • ひびや穴がある位置と大きさ(スマートフォンのカメラで接写しておくと伝えやすくなります)
  • 浮きやきつさを感じる場所と時間帯(夜つけた直後だけ浮くのか、朝まで浮いているのか)
  • 最近の装着状況(装着が遅れた日や外していた期間の有無)
  • 歯ぐきへの当たりや痛みの有無

受診当日は、傷んだリテーナーと普段使っている保管ケースを忘れずに持参しましょう。


ポイント

ひびや浮きがあっても、自分の判断でつけるのをやめないでください。まずは歯科医院へ連絡し、受診までどうつけておくかを聞いておきましょう。


リテーナーの作り直しの流れと、寿命を延ばす毎日の洗浄・保管


リテーナーを作り直す場合は、現在の歯並びと装置の適合を確認したうえで型取りを行い、新しい装置を作製します。日頃の洗浄と保管を見直すことで、新しい装置の劣化を抑えることができます。


診察から口腔内スキャン、受け取りまでの流れと来院回数の目安


歯科医院を受診すると、まずは持参したリテーナーを装着した状態で、浮きの位置や亀裂の深さ、歯並びの変化、噛み合わせを確認します6。そのうえで作り直しが必要と判断された場合は、新しい装置を作るための歯型採取に進みます。


歯型の記録には、粘土のような材料を使う方法のほか、小型カメラでお口の中を撮影する口腔内スキャナーで歯並びをデジタルデータとして記録する方法があります。型取りから新しいリテーナーの完成・受け取りまでは1〜2週間程度かかるのが一般的で、来院回数は型取りと受け取りの2回程度が目安です。ただし、お口の状態や医院の作製体制によって異なるため、事前の確認が必要です。また、新しい装置を受け取るまでの期間、今の装置をそのまま使い続けてよいかどうかも診察時に必ず確認しておきましょう。もし後戻りが進んでいて既存の装置が使えない場合は、対応方針を歯科医師と相談します3。

※歯科医師の判断により、装置の作製・お渡しができない場合があります。


作り直し費用に含まれる項目と、事前に確かめたい保証の有無


リテーナーの作り直しは、矯正治療と同じく健康保険が使えない自由診療(保険外費用)になることが多いです。費用は装置の種類や医院によってちがい、一般的には診察のあとに説明があります。


費用を確認する際は、装置本体の代金だけでなく、診察料や歯型採取・口腔内スキャンの費用、受け取り時の調整料が総額に含まれているか、あるいは別料金になるのかを確かめておくと見通しが立てやすくなります。また、矯正治療の契約内容によっては、保定期間中の作り直しが治療費に含まれていたり、一定の保証条件が設けられていたりする場合もあります。受診前に手元の案内書類を見直すか、医院へ問い合わせてみましょう。


忙しい夜でも続けられる洗浄・保管と、熱で変形させない注意点


仕事や育児で慌ただしい毎日の中でも、少しの工夫でリテーナーの寿命を延ばすことができます。朝晩の取り外し時には、まず水かぬるま湯を流しながら、毛先の柔らかい歯ブラシで内側と外側をやさしく撫でるように洗います。汚れや臭いが気になりやすい方は、週に数回など曜日を決めて、就寝前や朝の支度中にリテーナー専用の洗浄剤へ浸け置きすると無理なく続けられます。


一方で、変形や傷を防ぐために避けたい扱い方もあります。


  • 熱湯や食洗機、乾燥機を使わない(熱湯などの高温で樹脂が変形し、合わなくなります)
  • 研磨剤入りの歯磨き粉で磨かない(細かい傷がつき、着色や細菌繁殖の原因になります)
  • 夏場の車内や直射日光の当たる窓辺に置かない(高温による変形の原因になります)
  • 外したらすぐに専用ケースへ入れる(小さなお子さんやペットの手が届かない高い場所に保管場所を決めると、破損や紛失を防げます)

また、むし歯や歯周病を防ぐため、夜はしっかり歯磨きをしてから装着する習慣を続けましょう。


岡崎市で保定の経過観察を続けるために


保定期間は長く続くため、少しでも違和感を覚えたときに相談しやすい環境が歯並びの維持につながります6。リテーナーの状態確認では、一般的には、まず今の装置とお口の状態を照らし合わせることから始めます。


そのうえで口腔内スキャナーなどの機器も使いながら歯並びを確認し、今すぐ作り直しが必要なのか、今の装置で様子を見られるのかを一人ひとりの状態に合わせて判断します。相談したからといって、必ずその場で作り直す必要はありません。


なお、装置を外したあとにリテーナーを指示どおりに使わないと、後戻りが起こりやすくなります7。また、清掃が足りないとむし歯や歯周病のリスクもあります。


当院は名鉄「男川駅」から徒歩6分、東岡崎駅からタクシーで約3分の場所にあり、駐車場も備えています。お仕事の前後や送迎の合間にも、現在の装置とケースを持参のうえご相談ください。


ポイント

作り直しには通常1〜2週間ほどかかります。違和感があるときは早めに受診し、完成までの装着方法や費用の内訳を確認しておきましょう。


よくある質問


Q. リテーナーを装着してからしばらく経ったら、どうなりますか?


A. 矯正終了からしばらく経過すると、歯の周りの骨が少しずつ落ち着いてくる時期に入りますが、まだ完全に安定しているわけではありません64。歯科医師の判断で、1日中の装着から夜間のみの装着へ段階的に時間を減らしていくケースもありますが、自己判断で時間を減らすと後戻りの原因になります3。また、毎日使用した透明なリテーナーは、噛む力や着脱によって細かい傷やわずかなゆるみが出始める時期でもあるため、定期検診で歯並びの安定度と装置の状態の両方を診てもらいましょう。


Q. リテーナーを長期間使った後、歯はどうなりますか?


A. 保定期間を終えたあとも、年齢を重ねることによる変化として、歯は一生を通じて少しずつ動き続けます8。そのため、長期間経った後でも夜間のみリテーナーを続けていると歯並びを維持しやすくなりますが、ずっと同じ装置を使い続けられるわけではありません。劣化した装置を使い続けると抑える力が弱まるため、長期にわたって保定を続ける場合でも、ひびや変形が見られたタイミングで装置を作り直しながら継続していくことが大切です3。


Q. 引っ越しなどで矯正した医院へ行けない場合、別の歯科医院でも作り直せますか?


A. 引っ越しや前の医院の閉院などで通えなくなったときでも、矯正歯科をあつかう別の歯科医院でリテーナーの作り直しを相談することはできます。その場合は、今の歯並びをもとに新しく型取りや口腔内スキャンを行うため、診察や検査の費用、装置の代金がべつにかかります。前の医院から治療の経過の資料や紹介状を受け取れるときは持っていき、今使っているリテーナーもいっしょに見せると、どのような方針で保定していたかを伝えやすくなります。


参考文献


1. 顔の印象は口元から!きれいな歯並びで印象を変えよう!歯列矯正とは? | セラピア | 森ノ宮医療大学. https://therapia.morinomiya-u.ac.jp/category/beauty/post-58.html

2. Jedliński M, Grocholewicz K, Mazur M et al. What causes failure of fixed orthodontic retention? – systematic review and meta-analysis of clinical studies. Head & face medicine. 2021. PMID: 34301280 / DOI: 10.1186/s13005-021-00281-3

3. Littlewood SJ, Millett DT, Doubleday B et al. Retention procedures for stabilising tooth position after treatment with orthodontic braces. The Cochrane database of systematic reviews. 2016. PMID: 26824885 / DOI: 10.1002/14651858.CD002283.pub4

4. 治療方法のご紹介 | 診療内容 | PDI埼玉歯科診療所. https://www.meikai.ac.jp/pdisaitama/treatment/method/

5. Laspos C, Seehra J, Katsaros C et al. Survival of conventionally bonded mandibular retainers with or without enamel sandblasting in orthodontic patients over a 12-month period. A single-centre, split-mouth randomized clinical trial. European journal of orthodontics. 2023. PMID: 35639873 / DOI: 10.1093/ejo/cjac028

6. 矯正治療Q&A | Science Tokyo 旧・東京医科歯科大学. https://www.tmd.ac.jp/ort1/q_and_a/

7. 矯正歯科 | 公立大学法人 九州歯科大学附属病院. https://www.kyu-dent.ac.jp/hospital/specialty/orthodontic/

8. 矯正歯科外来|専門外来|医局紹介 | 東京医科大学 口腔外科学分野. https://team.tokyo-med.ac.jp/kouku/info/kyousei.html


荻野 一樹

歯科医師


東岡崎ジョイ歯科

理事長

荻野 一樹

▶ 監修者プロフィール

経歴
愛知県豊田市出身
愛知県立豊田西高校 卒業
国立鹿児島大学歯学部歯学科 卒業
医療法人小室会 小室歯科ステーション診療所 勤務
東岡崎ジョイ歯科開院
医療法人JOY 設立
株式会社ジョイ SONA DENTAL LABORATORY 設立
実習受け入れ実績:名古屋医療秘書福祉&IT専門学校(歯科助手実習)
資格・所属学会
エンジェルキッズ竜美丘園 園医
社団法人日本健康寿命を伸ばす会 代表理事
オステムインプラント公認アドバイザー
大阪口腔インプラント研究会25期生
大森塾8期生
臨床歯科麻酔管理指導医
日本有病者歯科医療学会