Column 矯正治療の豆知識

マウスピース矯正で追加費用がかかるケースは契約前の見積書で見分けよう

マウスピース矯正で追加費用がかかるケースは契約前の見積書で見分けよう

契約前の見積書で「基本料金の範囲」と「別料金の条件」を確かめる


追加費用がかかるかどうかは、治療の途中で計画を見直すことになるか、マウスピースをなくしたり壊したりするか、そして契約でどこまでが基本料金に入っているかで決まります。はじめに示された金額だけで決めると、あとから家計の予定を動かすことになりかねないため、気をつけましょう。


この記事では、基本料金にふくまれるもの、追加の対応ができる回数や期間、お金を払う時期の順に、見積書の読み方を見ていきます。いくつかの料金案内を同じ目線で見くらべ、納得して相談へ進むための質問もまとめています。


この記事の要点まとめ


  • 追加費用は治療計画の見直しや紛失・破損などで生じることがあり、負担の有無は契約内容によって異なります。
  • 見積書では基本料金の範囲に加え、追加アライナーの回数・期間・課金単位、再作製や保定の費用を確認します。
  • 治療開始から保定期間までの支払時期を整理し、不明点を質問メモにして相談時に歯科医師へ尋ねましょう。

マウスピース矯正で追加費用がかかるケースは「治療経過」と「生活上の管理」に分かれる

マウスピース矯正で追加費用がかかるケースは「治療経過」と「生活上の管理」に分かれる

マウスピース矯正で初期費用とは別に支払いが生じる場面は、歯の動き方など治療経過に関わるものと、紛失など生活上の管理に関わるものの2つに大別されます。さらに、追加の処置が必要になることと、その費用を患者さんが負担するかどうかは別の基準で決まります。


契約前には金額と一緒に追加費用の条件を確認する


契約後に予定外の出費が重なり、家計の計画が崩れるのではないかとためらいを感じる方もいらっしゃいます。当院では患者さんの気持ちへの共感と理解を重視し、起こり得ることは事前に伝える姿勢を掲げています。


マウスピース矯正は健康保険が使えない、自費の治療です。また、初期段階での痛みや不快感、歯根吸収、歯ぐきが下がるなどのリスク・副作用を伴います。そのため、契約前には提示された総額だけでなく、どのような条件で追加費用が発生し、いつ支払うことになるのかを順番に確かめておくことが大切です。


歯の動きが計画とずれたときに追加アライナーが検討されるケース


治療を進めていく中で、当初のシミュレーション通りに歯が動かず、追加アライナー(追加のマウスピース装置)の作製が検討されることがあります。歯と装置の間にすき間ができる「アライナーの浮き上がり」が見られる場合や、予定した位置まで歯が移動していない場合などが該当します。


また、深い噛み合わせの歯並びでは、成長期には奥歯が伸びて出てくるのを待つことが多い一方、大人では前歯を歯ぐき側へ沈める動きを検討します。このような場合は、経過に応じて計画を調整することがあります。


追加のマウスピースの枚数は、歯の動きのずれ方など歯の状態によって変わります。再スキャンから届くまでの期間や枚数の数え方も歯科医院によって異なるため、相談のときに目安を聞いておくと見通しが立てやすくなります。


外食時の置き忘れや装着時間の不足など生活上の管理に関わるケース


日常生活での装置の取り扱いによって、作り直しや計画の立て直しが必要になるケースもあります。たとえば、昼食時に外した装置を紙ナプキンに包んでそのまま置き忘れてしまったり、専用ケースに入れずに持ち歩いて破損してしまったりする場面です。


また、マウスピースは1日20時間以上の装着が目安で、つける時間が足りないと歯が予定どおりに動きにくくなります1。なお、歯の動き方や治療に必要な期間には個人差があり、装着時間が20時間を下回ったからといって一律に有料の再作製になると決まっているわけではありません。外出時は外したらすぐケースにしまうなど、置き場所を決めておくことで防げる出費もあります。


「追加対応が必要」と「追加費用を払う」は別に決まる


ここで押さえておきたいのは、「追加アライナーがいる」という歯科医師の見立てと、「追加の費用を払う」という契約の決まりは別々に決まるという点です。歯科医師が歯とマウスピースの合い具合を見て、スキャンのとり直しがいると考えても、それが契約にふくまれていれば患者さんが新たに払う必要はありません。


そのため、装着時間の不足や歯の動き方の個人差があったときに、すべて自己負担になると最初から思い込む必要はありません。まずは手元の見積書や契約書で、どの範囲までが基本料金に含まれ、どこからが別料金として定められているのかを確かめましょう。


ポイント

追加のマウスピースがいるかどうかは診察で決まりますが、お金を払うかどうかは契約の中身で決まります。総額の数字だけでなく、どこから自分で払うことになるのかを先に確かめましょう。


見積書で基本料金に含まれる範囲を項目ごとに照合する

見積書で基本料金に含まれる範囲を項目ごとに照合する

複数の歯科医院から取り寄せた料金案内を見比べるときは、記載されている金額の大小ではなく、基本料金にどこまでの項目が含まれているかをそろえて照合します。記載がない項目をそのままにせず、質問事項として抜き出すことが見通しの第一歩です。


検査・診断から保定まで、料金案内を同じ項目で照らし合わせる照合表


当院のマウスピース矯正の費用は、軽度の前歯部矯正が440,000円、中程度の矯正が660,000円、制限無しプランが990,000円です(いずれも税込み)。このほかに、精密検査・診断料として44,000円(税込み)がかかります。ほかの医院の費用は、歯の状態や医院ごとの料金の決め方によって変わります。


手もとにいくつかの料金案内があるときは、下の表のように、検査から治療のあとの保定(動かした歯をその位置にとどめておく期間)までの項目を並べて見くらべてみましょう。


確認項目医院Aの記載医院Bの記載記載がない場合に尋ねること
精密検査・診断料記載あり(別料金)基本料金に含む検査から計画作成までが別枠か
アライナー作製費基本料金に含む基本料金に含む初期作製分の枚数上限があるか
通院ごとの処置料記載あり(都度払い)記載なし毎回の診察・調整費が発生するか
再スキャン費用記載なし基本料金に含む計画変更時の型取りに費用がかかるか
追加アライナー費条件付きで記載あり記載なし何回・いつまで基本料金内で対応できるか
紛失・破損時の再作製記載あり(1枚単位)記載なし作り直しの費用と支払うタイミング
保定装置の初回作製記載なし基本料金に含む治療終了時の装置代が別途必要か
保定装置の再作製記載なし記載なし破損・紛失時の作り直し費用はいくらか
保定期間中の診察料記載なし記載あり(都度払い)保定中の定期確認に診察費がかかるか

料金案内に記載がない項目を見つけたときは、「含まれない」とも「追加負担なし」とも判断せず、いったん空欄として扱います。その空欄こそが、初回相談で歯科医院へ直接尋ねるべき確認リストになります。


採用プランの名称だけで追加対応の費用範囲を判断しない


当院では大人の矯正にマウスピース装置を使い、インビザラインコンプリヘンシブを採用しています。ここで注意したいのは、ある医院やプランの回数条件を、別の医院やプランにそのまま当てはめないことです。


同じメーカーの装置やプラン名称であっても、再スキャンの手数料、追加アライナーの作製費、通院ごとの処置料までが基本料金に含まれているかどうかは、各歯科医院の契約内容によって異なります。装置の名称だけで費用範囲を判断せず、項目ごとに個別の条件を確かめる姿勢が求められます。


スキャンで分かることと契約で決まる費用範囲を分ける


当院では口腔内スキャナー「iTero」を使っています。お口の中を光学スキャンすることで歯並びの状態を立体的に把握しやすくなりますが、スキャンを受けた時点で将来の追加対応の有無や総支出がすべて確定するわけではありません。


実際の歯の動き方は治療を始めてみなければ分からない部分があり、1日20時間以上が目安の装着を守れているかによっても経過は変わります。そのため、「検査やスキャンで分かるお口の見通し」と「もし追加対応が必要になったときに契約上どこまでカバーされるか」は、別々の質問として分けて確認することが大切です。


別料金になる条件は回数・対象期間・課金単位で読み取る


基本料金に含まれる項目を整理したら、次は別料金が発生する具体的な条件を読み取ります。見積書や案内資料を見る際は、「何回まで」「いつまで」「どの単位で」「処置料などが別にかかるか」という4つの点でチェックすると、条件の違いがはっきり分かります。


追加アライナーは「何回まで・いつまで・1回の数え方」を確かめる


計画の調整に伴う追加アライナーについては、医療機関ごとに細かな条件が設定されています。たとえば、基本料金内で作れる回数を部分矯正と全体矯正で分けていたり、開始から一定の期間内だけを対象にしていたりする医院があります。2回目以降の作製費や処置料も、医院により数千円〜数万円の設定があります(いずれもほかの医院の例で、当院の費用や条件ではありません)。


このように条件が分かれるため、見積書では以下の4点を確かめる必要があります。


  • 基本料金の中で作れる回数の上限
  • 対象になる期間(治療を始めてから何年・何か月以内か)
  • お金のかかる単位(1枚ごとか、1セットごとか、上下の片方か両方か)
  • スキャンのとり直し代や処置料が別にかかるか

紛失・破損時の再作製費は「負担の判断」と「1枚あたりの単位」を確かめる


外出先での置き忘れや破損による装置の作り直しは、患者さん側の負担となることが多い項目です。ほかの医院では、片顎の1枚単位や上下単位で作り直しの費用を設けていることがあり、医院により数千円〜数万円の設定があります(こちらもほかの医院の例で、当院の費用ではありません)。


確認したいのは、紛失と破損で扱いが分かれるかどうか、また通常の装着による自然な劣化・ひび割れと不注意による破損をどう区別するかという点です。さらに、次の段階の装置へ進む直前であれば作り直さずに前後の装置で代用できる場合があるか、再作製費はいつ支払うのかも事前に聞いておくと、支払いの見通しが立てやすくなります。日々の生活では、食事で外した際に必ず専用ケースへ入れる習慣をつけるだけでも、こうした出費のリスクを減らせます。


保定装置は「初回作製・再作製・保定中の診察」を分けて確かめる


歯並びを整える期間が終わった後は、歯が元の位置に戻ろうとするのを防ぐため、リテーナー(保定装置)を装着する期間に入ります2。取り寄せた料金案内に保定装置代の記載がない場合は、治療総額に含まれているのか、それとも治療終了時に別途請求されるのかを必ず確認しましょう。


保定装置にはマウスピース型やプレート型、ワイヤーで固定するタイプなどがあり、種類によって費用が変わります。当院での費用は、診察のうえでご案内します。相談時には、初回の作製費が総額に含まれるかに加え、数年間使う中で割れたり失くしたりした際の再作製費、そして保定期間中の定期診察費の3つを分けて尋ねておくと、治療後の支出まで見通しやすくなります。


ポイント

別料金の決まりは「何回まで・いつまで・どの単位で・処置料などが別にかかるか」の4点で見くらべましょう。歯を固定する期間の費用までふくめて確かめておくことが大切です。


支払う時期を見通して相談前に質問を整理する


見積書の内訳と別料金の条件が把握できたら、最後に「いつ支払う可能性があるのか」を時系列で整理します。住宅ローンやお子さんの教育費など、毎月の家計管理と両立させるために、相談前に確認事項をまとめておきましょう。


治療開始から保定まで支払う時期を整理する


当院は歯だけでなく、その人の健康や生活まで考えて診療しています。矯正治療も、無理のない生活設計の中で続けられることが大切です。


支出が生じ得るタイミングは、大きく次の4つの時期に分けて整理できます。


1. 治療を始めるとき:精密検査・診断料と、基本料金(はじめのマウスピース代をふくめた総額)

2. 治療のあいだ:通院ごとの処置料、条件をこえたときの追加アライナー代、なくしたり壊したりしたときの作り直し代

3. 保定を始めるとき:はじめのリテーナー(保定装置)の作製代、装置を外すときの費用

4. 保定のあいだ:経過をみる定期の診察料、リテーナーが壊れたり傷んだりしたときの作り直し代


このように時期を分けて書き出しておくと、契約時にまとまって必要な金額と、1〜2年後の治療後半や終了時に必要になる金額を切り分けて準備できます。


追加対応の理由と費用の扱いは担当医に分けて尋ねる


治療を進めるなかで追加の対応がいるときに、説明する歯科医師が毎回ちがうと、はじめの計画からどう変わったのかが分かりにくくなります。当院は完全担当医制で、同じ歯科医師がつづけて治療の方針をお話しします。


最初に治療計画を相談した担当医と継続して話せる体制であれば、経過の中で疑問が生じた際も過去の説明を踏まえて確認しやすくなります。相談時には、「なぜ歯の動きにずれが生じて追加対応が必要なのか」という診療上の理由と、「その対応は今回の契約上、基本料金の範囲内か別料金か」という費用の扱いを2段階に分けて尋ねるようにしましょう。


愛知県岡崎市で相談先を決める前に持参したい質問と見積書の見方


ここまで整理した照合表の空欄は、そのまま相談時に持参する質問メモとして活用できます。「追加アライナーの回数と期間の上限」「紛失・破損時の単位あたりの費用と支払時期」「保定装置と保定中の診察費の扱い」を書き留めておきましょう。あわせて「料金案内に記載のない項目を書面で示してもらえるか」もメモしておくと、聞き忘れを防げます。


また、マウスピース矯正は定期的な通院が続くため、生活圏から無理なく通えるかも判断材料になります。愛知県岡崎市にある当院へは名鉄「男川駅」から徒歩6分、名鉄「東岡崎駅」からタクシーで約3分で、第1〜第3駐車場と共同の第4駐車場を利用できます(診療時間の詳細はアクセスページでご確認ください)。


初期の総額を抑えたい方には基本料金が小さく必要な処置だけ都度払う料金体系が向く一方、家計の予定を崩したくない方には、追加対応や保定までの条件が契約前の書面で明確に読み取れる料金案内が向いています。なお、矯正治療に要する期間や歯の動き方には個人差があり、装着時の痛みや歯根吸収などのリスク・副作用を伴います。相談を受けたからといってその場で契約を決める必要はありませんので、まずは手元の案内資料と質問メモを持って、費用の見通しを確かめるところから始めてみてください。


ポイント

支出の時期を「治療を始めるとき・治療のあいだ・保定を始めるとき・保定のあいだ」の4つに分け、料金案内の空欄を質問メモにして相談へ持参すると、家計の見通しが立てやすくなります。


よくある質問


Q. 深い噛み合わせの矯正費用はどのくらいですか?


A. 当院のマウスピース矯正の費用は、軽度の前歯部矯正が440,000円、中程度の矯正が660,000円、制限無しプランが990,000円です(いずれも税込み)。大人の深い噛み合わせでは、前歯を歯ぐき側へ沈める動きを検討することがあります。そのため部分矯正ではなく全体矯正の料金帯が検討されることが多く、具体的な費用は診察でお口の状態をみてご案内します。


Q. 歯列矯正で100万円かかった場合、医療費控除でいくら戻りますか?


A. 所得税の税率が10%の方なら、所得税で約9万円が戻り、次の年の住民税も約9万円へるのが目安です。かみ合わせやかむ働きをよくするための矯正と診断されたときは、1年間に払った医療費のうち10万円(所得の合計が200万円以上のとき)をこえた分が、医療費控除の対象になります。100万円なら対象は90万円で、これに税率をかけた額が戻るしくみです。


戻る額は、年収やほかの控除の状況によって変わります。なお、見た目を整えることだけが目的の矯正は対象外です。診断の目的や手続きの細かな点は、歯科医師とお住まいの地域の税務署にご確認ください。


Q. マウスピース矯正をすると痩せることがありますか?


A. マウスピース矯正そのものに体重を減らす医学的な作用はありません。ただし、装置は1日20時間以上つけるのが目安です3。飲食のたびに外して歯磨きをしてからつけ直す手間があるため、間食やダラダラ食べの回数が減り、食生活が変わることはあります。


食事量を過度に減らすと体調や歯ぐきの健康に影響するため、栄養バランスのとれた食事を心がけてください。


Q. 矯正用のマウスピースで歯ぎしりは治りますか?


A. 歯並びを整えるためのマウスピース矯正装置は、歯ぎしりそのものを治す治療器具ではありません。強い食いしばりや歯ぎしりがあると、プラスチック製のマウスピースが変形・破損することがあります。予定した歯の動きに影響することもあるため、歯ぎしりの症状がある方は、装置の破損時の費用条件も含めて事前に歯科医師へお伝えください。


参考文献


1. 診療内容 – 神戸常盤大学歯科診療所. https://dental-office.kobe-tokiwa.ac.jp/treatment/

2. 矯正歯科治療について | PDI浦安歯科診療所. www.meikai.ac.jp. https://www.meikai.ac.jp/pdiurayasu/orthodontic/

3. 矯正歯科|昭和医科大学歯科病院. https://www.showa-u.ac.jp/SUHD/department/list/ortho/

4. 研究者詳細 – 楠元 淳也. ris.kuas.kagoshima-u.ac.jp. https://ris.kuas.kagoshima-u.ac.jp/html/100007545_ja.html


荻野 一樹

歯科医師


東岡崎ジョイ歯科

理事長

荻野 一樹

▶ 監修者プロフィール

経歴
愛知県豊田市出身
愛知県立豊田西高校 卒業
国立鹿児島大学歯学部歯学科 卒業
医療法人小室会 小室歯科ステーション診療所 勤務
東岡崎ジョイ歯科開院
医療法人JOY 設立
株式会社ジョイ SONA DENTAL LABORATORY 設立
実習受け入れ実績:名古屋医療秘書福祉&IT専門学校(歯科助手実習)
資格・所属学会
エンジェルキッズ竜美丘園 園医
社団法人日本健康寿命を伸ばす会 代表理事
オステムインプラント公認アドバイザー
大阪口腔インプラント研究会25期生
大森塾8期生
臨床歯科麻酔管理指導医
日本有病者歯科医療学会