
久しぶりの歯科受診で知っておきたいこと
何年も歯医者に行っていなくても、受診はできます。予約のときに「怖い気持ち」や「先に説明してほしいこと」を伝えて、相談から始められます。
この記事では、予約のときに使える言葉の例から、問診・検査・説明までの初診の流れ、その日に処置まで進むかどうかの考え方、検査の中身や費用を前もって確かめる方法までをまとめました。説明を聞けないまま治療が進むことへの不安をやわらげ、ご自身のペースで相談する手順を見ていきましょう。
この記事の要点まとめ
- 長いあいだ歯医者に行っていなくても相談でき、予約のときに怖さや、説明してほしいことを伝えられます。
- 初診は問診・検査・結果の説明が基本で、その日に処置をするかは、お口の様子や希望によって変わります。
- 検査が必要な理由や費用、かかる時間を前もって聞き、どの歯から治すかや通い方を相談できます。
何年も歯医者に行っていなくても、今から受診してよいのか?
受診していなかった年数は歯科医院へ行くのを控える理由にはならず、まずは現在のお口の状態を確認することが出発点となります。歯科への恐怖を抱える大人は珍しくありません 1。症状が軽いうちに相談することで、その後の負担を抑えやすくなります。
8年、20年と間が空いていても受診をためらう必要はない
8年や10年、あるいは20年ほど歯科医院から足が遠のいていても、受診をためらう必要はありません。歯科診療の目的は、これからのお口の健康を守るために今の状態を把握することにあります。
なぜ長い間放置したのかと理由を問い詰める場ではないため、お口の中を見せることに恥ずかしさを感じすぎなくて大丈夫です。20年通っていない場合でも、まずは「全体を見てほしい」と伝えて予約を取ることから始められます。
歯医者が怖いと感じる大人は少なくない
大人になってから歯科医院を怖いと感じる方は少なくありません。大人の中にも、歯科への恐怖を抱えている方が一定の割合でいます 1。
痛みに敏感な方や、キーンという削る音、特有のにおいが苦手な方もいます。過去の治療でつらい思いをした経験や、口を大きく開けて見せる恥ずかしさなど、怖さのきっかけは一人ひとり異なります。
冷たいものがしみる程度の今が、相談しやすい段階
冷たい飲み物や歯みがきのときに歯がしみるのは、知覚過敏(歯の表面がすりへるなどして、刺激が伝わりやすくなる状態)や、はじめから中くらいまでのむし歯、歯ぐきが下がっていることなど、いくつかの原因が考えられます。鏡で見るだけでは原因をつきとめにくいため、歯医者さんでみてもらうことが大切です。
受診を先のばしにしているうちに、むし歯や歯周病が進むこともあります。進み方によっては、神経を抜く処置や抜歯が必要になり、通う回数が増えることがあります。しみる程度のうちなら、選べる処置のはばも広がります。
久しぶりの受診で怖いのは何か、どう伝えればよいのか?

久しぶりの受診で感じる怖さの一つに「説明を聞けないまま処置が進むこと」があり、予約時と診療中の両方で説明の希望を伝えて構いません。事前に不安の中身を言葉にしておくことで、落ち着いて診察を受けやすくなります。
怖さの正体を「説明がないまま進むこと」と言葉にしてみる
歯科治療への恐怖は、痛みや音そのものだけでなく、次に何をされるか分からない状態や、診療台に座ったら断れないという感覚から強まることがあります。以前の治療で十分な説明を聞けないまま処置が進んだ経験がある方は、こうした怖さを感じやすいこともあります。
漠然と「怖い」と抱え込むのではなく、「説明がないまま進むのが怖い」「納得してから処置してほしい」と言葉にして整理してみてください。伝えておきたい希望がはっきりし、歯科医院側とも共有しやすくなります。
予約時に伝えておきたい一言の例
予約を取る際、自分の気持ちや希望を先に伝えておくと当日の緊張が和らぎます。状況に合わせて、次のような言葉をそのまま使ってみてください。
- しばらく行っていない不安:「8年ほど歯医者に行っておらず、緊張しています」
- 先に説明してほしい:「処置に入る前に、何をするか説明してほしいです」
- 苦手なことを伝える:「歯を削る音や麻酔の痛みが苦手です」
- その日にしてほしいこと:「今日は相談と検査だけにしたいです」
伝えかたは、電話で話す、Web予約のメモ欄に書くなど、歯医者さんによってちがいます。予約の画面や案内を見て、書ききれないときは受付でメモを渡す方法もあります。
処置前だけでなく、診療の途中でも説明を求めてよい
不安や緊張を感じる方が落ち着いて診療を受けるには、処置の前後だけでなく、進んでいる最中の情報共有も大切です。そうした方のために、当院では症状や治療の目的、内容を丁寧に説明し、治療開始前だけでなく診療の途中でも必要な情報をお伝えしています。
「今どのような処置をしているのか」「あとどのくらいかかるのか」など、途中で浮かんだ小さな疑問にもお答えする姿勢を大切にしています。ご納得いただいた上で治療を進めていきますので、気になることがあれば診療中でも遠慮なくお尋ねください。
ポイント
「処置の前に説明してほしい」という希望は、予約時だけでなく診療の途中でも伝えて構いません。
初診ではどんな流れで進み、その日に歯を削ることはあるのか?

初診は問診・お口の中の検査・必要に応じた画像検査・結果の説明という流れで進むのが基本で、当日に歯を削る処置まで進むとは限りません。処置に入る前に、その日に行う内容を確認することができます。
問診から検査、結果の説明までの一般的な順番
久しぶりの初診では、いきなり歯を削るのではなく、現状を調べるための段階を踏んで進みます。
1. 問診:気になる症状や飲んでいる薬、もともとある病気、歯の治療でこわいことや苦手なことを紙に書き、くわしく話を聞いてもらいます。
2. 口腔内の検査:鏡や器具を使って、むし歯の有無、詰め物の状態、歯ぐきの腫れや歯石の付着などを確認します。
3. 必要に応じた画像検査:目で見えない歯と歯の間や根の周りの状態を調べるため、必要に応じてレントゲン撮影などを行います。
4. 結果と方針の説明:検査で分かった現在の状態と、治療が必要な箇所、優先順位についての説明を受けます。
問診票には、お口の症状だけでなく「久しぶりで怖い」「説明を聞いてから決めたい」といった希望も書き添えておくとスムーズです。
「初診の日に削られる」とは限らない、処置の前に確認したいこと
「初診に行くと、その日のうちに歯を削られる」と思い込んでいる方もいますが、実際には状況や希望によって異なります。強い痛みや腫れがある場合には痛みを和らげる応急処置を行うことがありますが、緊急性が低ければ初診は検査と説明、あるいはクリーニングまでで終えるケースも少なくありません。
もし当日に何らかの処置が提案された場合は、始まる前に次の点を確認してみてください。
- 処置の内容:今日具体的にどのような処置をするのか
- 当日の必要性:今日行う必要があるのか、次回以降でもよいのか
- 痛みの配慮:麻酔を使うのか、痛みが出る可能性はあるか
- かかる時間:処置にどのくらいの時間がかかるのか
当院でも、むし歯治療において痛みに配慮し、表面麻酔や圧力がかかりにくい麻酔器を用いたり、削る量を最小限に抑えたりする取り組みを行っています。疑問を解消してから処置に臨みましょう。
つらくなったときの合図は、始まる前に相談しておく
診療台に座ったあと、途中で苦しくなったり痛みを感じたりしたときに「我慢しなければならない」と思うと恐怖心が強まります。これを防ぐため、処置が始まる前に「つらくなったら左手を挙げる」といった中断の合図を歯科医師やスタッフと決めておく方法があります。
途中で休む合図への対応や、少しずつ器具に慣れていく段階的な進め方ができるかどうかは、歯科医院ごとに運用が異なります。受診前や診療室に入った段階で、「途中で休みたいときはどうすればよいか」を相談しておくことをおすすめします。
検査の内容や費用、所要時間は事前にどこまで確認できるのか?
はじめての日の検査は、みんなに同じものをするわけではありません。検査がいる理由や費用の目安、かかる時間は、予約のときや検査の前にたずねて確かめられます。事前に見通しを知っておくことで、家計や予定への心配を減らせます。
歯科用CTは何を調べる検査か、必要性と費用を確認する
画像検査には全体を見るレントゲンのほかに、お口周りを立体的に撮影する歯科用CTがあります。たとえば当院では、歯の根の中を治療する根管治療の前に、歯科用CTの3次元画像で根管の数や形状、病変の大きさなどを確認しています。
このように歯科用CTは、立体的な情報が必要と判断された場合に行う検査であり、初診の患者さん全員に必ず撮影するものではありません。もし撮影を提案された際は、「何を調べるために必要か」「費用はどのくらいかかるか」を撮影前に質問して確認することができます。
初診費用は「何が含まれるか」まで聞いておく
初診の費用は、問診とかんたんな検査だけのとき、レントゲンなどの画像検査が加わるとき、その日にクリーニングや応急処置までするときで変わります。保険診療でも、検査や処置の内容によって数千円程度の幅があり、医療機関によってもちがいます。
家計への影響が気になる方は、予約時に「初診で検査だけの場合の目安はいくらか」「レントゲンなどが含まれるか」と内訳まで聞いておくと、当日あわてずにすみます。
所要時間と持ち物も予約の段階で確認する
初診は問診票の記入や検査、結果の説明があるため、通常の通院より時間がかかる傾向があります。平日の仕事帰りや子どものお迎え前など、後ろに予定がある場合は、予約の段階で「初診は全部で何分ほどかかりますか」と確認しておきましょう。
当日の持ち物は、マイナ保険証または資格確認書(保険の資格を確かめるもの)のほか、服用中の薬がある方はお薬手帳が必要です。過去の治療で外れた詰め物や、伝えておきたい症状・希望を書いたメモも持参すると役立ちます。必要な持ち物の詳細も予約時に合わせて確認してください。
ポイント
検査の必要性・費用の内訳・所要時間の3つは、予約時や検査に入る前に質問して確かめることができます。
治療が必要と分かったら、その後の通院はどう決めていくのか?
検査で複数のむし歯や歯周病が見つかっても、担当の歯科医師と優先順位や進め方を相談し、計画に納得してから治療を始めることができます。仕事や家庭の予定に合わせて、無理のない通院ペースを組み立てていきます。
通院が必要になったときは、担当医と進め方を相談する
久しぶりの受診でお口の中にいくつも問題が見つかると、「これから何度も通わなければならないのか」と不安になるかもしれません。当院では、むし歯や歯周病、被せ物などの補綴(ほてつ:欠けた歯や失った歯を人工物で補う治療)、抜歯、精密根管治療など幅広い診療に対応し、完全担当医制で治療の一貫性を保っています。
毎回同じ歯科医師が担当するため、初診で伝えた「怖い気持ち」や「説明してほしい」という希望をその都度一から話し直す必要がありません。診療の途中で出てきた疑問も継続して相談しながら、通院回数や治療の順番を一緒に決めていくことができます。具体的な回数や順序は、お口の状態に応じて担当医にご確認ください。
| 確認したい項目 | 担当医へ相談する内容の例 |
|---|---|
| 治療の優先順位 | 痛みやしみる症状がある歯など、どの歯から先に治すか |
| 処置の緊急度 | 今すぐ治療が必要な歯と、経過観察(様子見)にできる歯の区別 |
| 通院の見通し | 区切りがつくまでのおおよその通院回数と、1回あたりの所要時間 |
| 費用の考え方 | 保険診療を中心に進めるか、ご予算に応じた治療範囲の選択 |
優先順位と通院の見通しを聞き、納得してから始める
検査結果の説明を受ける際は、上の表のように「どこから治すか」「どのくらい通うか」の見通しを聞いておきましょう。すべての歯を一度に完璧に治そうと気負う必要はなく、生活のスケジュールやご予算に合わせて治療の範囲や段階を相談する方法もあります。
銀歯ではなく白いセラミックの詰め物・かぶせ物を選ぶ治療は、公的医療保険が使えない自由診療になることがあります。点滴で鎮静剤を入れ、うとうとした状態で処置を受ける静脈内鎮静法も同じです。
かかるお金や通う回数、終わるまでの期間は、治す歯の数やお口のようす、歯医者さんによってちがいます。一般的には、費用は診察のあとに説明を受けることが多いです。
自由診療を選ぶときは、保険診療とのちがい、費用の目安、通う回数、治療後に起こりうることやメンテナンスが必要かどうかを先に聞いておきましょう。気になる点を確かめ、治療計画に納得してから進めることが大切です。一般的には、仕事や家庭の都合に合わせて通院日時を相談できることが多いです。
腫れや強い痛み、治らない口内の異常があるときは予約日を待たずに相談する
ここまで計画的な受診について説明してきましたが、症状によっては予約日を待たずに早めの受診が必要なケースもあります。歯ぐきや顔が大きく腫れている、発熱を伴う、夜眠れないほどの強い痛みがあるといった場合は、我慢せずに歯科医院へ連絡して状況を伝えてください。
また、なかなか治らない口内炎や、口の中にいつもとちがう様子があるときは、そのままにせず早めに歯科医院でみてもらいましょう。急な症状の際の受付方法は歯科医院によって異なるため、まずは電話等で確認しましょう。まずは現在のお口の状態を知るための相談から、一歩を踏み出してみてください。
よくある質問
Q. 銀歯が取れたまま放置していますが、何日以内に受診したほうがよいですか?
銀歯や詰め物が取れたときは、痛みがなくても早めにかかりつけの歯科医院でみてもらいましょう。めやすとしては、痛みがなくても数日から1週間以内に受診すると、まわりの歯が動く前に対応しやすくなります。
取れた部分は歯の内部のやわらかい層がむき出しになっており、むし歯が進みやすいためです。また、時間が経つと周りの歯が少しずつ動いてしまい、取れた銀歯をそのまま戻せなくなることがあります。取れた銀歯はティッシュに包むと捨ててしまいやすいため、小さな容器や袋に入れて持参してください。
Q. むし歯が進行して歯の根っこだけ残っている(残根)場合でも、相談して大丈夫ですか?
歯の頭の部分が崩れて根っこだけが残っている状態(残根)でも、遠慮なくご相談ください。放置すると根の先に膿がたまったり、歯ぐきが腫れたりする原因になります。診察ではレントゲンなどで根の長さと周囲の骨の状態を調べ、根管治療を行って土台を立てることで歯を残せるか、あるいは抜歯して別の方法で補う必要があるかを判断します。すぐに抜くと決まっているわけではないため、まずは状態の確認から始めましょう。
Q. 受診する直前に歯磨きをして行ったほうがよいですか?また、歯石は自分で取ってから行くべきですか?
受診前の歯みがきは、いつもどおりにしていただいて構いません。外出先や仕事帰りでみがく時間がないときは、うがいをするだけでも受診できます。一方で、下の前歯の裏などに付いた歯石を、市販の器具を使ってご自身で削り取るのはやめておきましょう。すでに付いてしまった歯石や着色汚れは、自分で取ろうとせず、歯科医院で相談してください。
参考文献
1. Silveira ER, Cademartori MG, Schuch HS et al. Estimated prevalence of dental fear in adults: A systematic review and meta-analysis. Journal of dentistry. 2021. PMID: 33711405 / DOI: 10.1016/j.jdent.2021.103632
愛知県立豊田西高校 卒業
国立鹿児島大学歯学部歯学科 卒業
医療法人小室会 小室歯科ステーション診療所 勤務
東岡崎ジョイ歯科開院
医療法人JOY 設立
株式会社ジョイ SONA DENTAL LABORATORY 設立
実習受け入れ実績:名古屋医療秘書福祉&IT専門学校(歯科助手実習)
社団法人日本健康寿命を伸ばす会 代表理事
オステムインプラント公認アドバイザー
大阪口腔インプラント研究会25期生
大森塾8期生
臨床歯科麻酔管理指導医
日本有病者歯科医療学会
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