
健診で「要受診」と言われた日に、まず知っておきたいこと
学校から持ち帰った歯科健診の用紙に、奥歯の受診をすすめる印がついていた。以前の健診で口を開けるのを嫌がったお子さんだと、診察から処置まで進められるのか、麻酔の注射に耐えられるのかと気になりますよね。
むし歯の治療は、歯の種類や深さ、痛み、お子さんの様子を確かめながら段階的に決めていきます。この記事では、初診で確かめること、削る処置と麻酔の考え方、治療の流れ、帰宅後の見守り方を順に整理しました。受診前に流れを知っておくと、お子さんへの声かけを落ち着いて考えられます。
この記事の要点まとめ
- 初診では歯の種類やむし歯の深さ、痛み、お子さんの様子を確認し、削る処置や麻酔、経過観察などを相談します。
- 治療は慣れる練習から始めることもあり、当日行うか別日にするかは症状やお子さんの様子に応じて決まります。
- 麻酔後は食事や唇・頬の状態を見守り、通院回数や費用、医療費助成について歯科医院や自治体に確認します。
子どものむし歯は削る?麻酔を使う?初診で確かめること

削るかどうか、麻酔を使うかどうかは、健診の結果だけでは決まりません。歯の種類、むし歯の深さ、痛みの有無、お子さんの様子を診察で確かめたうえで方針を考えます。
初診では歯の状態と怖がり方をどう確認する?
初診では、健診用紙の内容、痛みや腫れの有無、おやつや歯磨きの習慣をうかがってから口の中を診察します。歯と歯の間や詰め物の下など、目で見えにくい場所が気になるときは、レントゲン撮影を検討します。
口を開けるのが難しい場合でも、無理に診察を進めることはしません。当院に限らず、椅子に座る、ライトや手鏡を見てみるといった小さな段階から慣れてもらい、できたことを褒めながら次へ進む方法があります。こうした基本的な行動対応法は、子どもの歯科治療中の不安・恐怖や行動に一定の効果があると示唆されています1。
乳歯・永久歯とむし歯の深さで処置はどう変わる?
生え変わりの時期に生える奥歯は、乳歯か永久歯かを歯科医師が診察で確かめます。どちらの歯か、むし歯がどこまで進んでいるかで、対応の考え方は変わります。
| むし歯の状態 | 主な対応の例 |
|---|---|
| 表面が白く濁る初期の変化 | 歯磨き指導やフッ素塗布をしながら経過をみる |
| 穴があいたむし歯 | むし歯の部分を取り除き、白い材料などで詰める |
| 神経まで及ぶむし歯 | 神経の処置をしてから、詰め物や被せ物で補う |
表はあくまで目安で、同じ段階でも場所や広がり方によって判断が分かれます。乳歯はいずれ抜けますが、噛むことや顎の発達、後から生える永久歯の歯並びにも関わります。乳歯だからと様子見にせず、一度診断を受けておくと治療の選択肢を相談しやすくなります。
削るときの麻酔は、深さや痛みでどう判断する?
浅いむし歯なら麻酔を使わずに処置できることもあり、深くて痛みが出やすい場合は局所麻酔(歯ぐきへの注射で、治療する部分だけ感覚を鈍らせる方法)を検討します。年齢だけで決めるものではありません。
注射を怖がる気持ちと、麻酔なしで削るときの負担。どちらも大切にしたいところです。一般的なむし歯治療は局所麻酔を使い、回転する器具で削って詰める方法で行われ、手作業の器具でむし歯を取り除く方法と比べた研究もあります2。お子さんの協力の度合いも含め、どちらが負担を抑えやすいかを歯科医師と一緒に考えていきましょう。
すぐに削れない場合、進行を抑えながら待てる?
泣いてしまう、麻酔が使えないなどの理由で処置が難しいとき、むし歯の進行を抑える薬を塗って様子をみる方法があります。ただし、塗った部分の色の変化については、歯科医師にご相談ください。
この方法はどのむし歯にも当てはまるわけではなく、深さや場所によっては選べないこともあります。治療ができるようになった段階で、変色した部分を取り除いて白い材料で詰め直す場合もあるため、後の計画まで含めて相談し、方針を確認しておきましょう。
ポイント
削る・麻酔を使う・薬で進行を抑えて待つ、のどれを選ぶかは、むし歯の深さとお子さんの様子を合わせて判断します。
診察から削る処置まで|怖がるお子さんの治療の流れ

初診の日にどこまで進めるかは、お子さんの状態しだいです。慣れる練習だけで終える日もあれば、痛みが強く当日に処置を行う日もあります。
診察の日に治療もする?別日にする?
痛みや腫れがある場合は、それを和らげる処置を優先します。急ぐ症状がなく、口を開けることにまだ抵抗があるなら、初日は診察と練習にとどめ、治療は別の日にする進め方も珍しくありません。
当院に限らず、一人で診療室に入る、歯磨きの練習をするといった段階をひとつずつ踏み、できたことを褒めながら治療へ進む方法があります。仕事の調整や下のお子さんの預け先が必要なご家庭も多いので、次回の予定は初診のときに相談しておくと組み立てやすくなります。
麻酔を使って削る日は、どんな順番で進む?
局所麻酔を使う日の一般的な流れは、次のとおりです。
1. これから行うことを、お子さんにわかる言葉で説明する
2. 必要に応じて、歯ぐきに塗る表面麻酔をする
3. 局所麻酔の注射をして、少し時間をおいて効き具合を確かめる
4. むし歯を取り除き、詰め物をする
5. 噛み合わせを確認して終了
説明の段階では、器具を動かして見せたり、手鏡でお口の中を見てもらったりします。「お話する、見せる、そのとおりに行う」という順番を守ると、お子さんは次に何が起きるかを予測しやすくなります1。なお、当院に限らず、使用した器具は高圧蒸気滅菌器などで滅菌処理します。
途中で泣いたり動いたりしたら、処置は続ける?
器具を使っている最中に急に動いたときは、いったん手を止めます。痛いのか、怖いのか、音が気になるのかを確かめ、説明し直してから再開するかを判断します。
緊急の場合を除き、泣いているお子さんに無理に治療を進めることはありません。 練習を重ねても処置が難しいときは、鎮静法(薬で緊張を和らげる方法)を用いる医療機関への相談も選択肢になります。鎮静に使う薬や方法の効果は研究が続けられている段階で3、適応は歯科医師が判断します。
詰め物を入れたあと、通院は何回必要?
浅いむし歯なら1回の処置で詰め物まで終えられることもあり、神経まで及ぶ場合は消毒を重ねるため複数回の通院になります。乳歯でむし歯の範囲が広いときは、詰め物ではなく被せ物を検討することもあります。
通院回数は歯の状態で変わるため、「次回は何をするのか」「全部で何回くらいか」を診察のたびに尋ねてみてください。当院を含め、担当医制かどうかにかかわらず、歯科医師に経過を見ながら説明してもらい、方針を確かめておきましょう。
ポイント
当日どこまで進めるかは、症状とお子さんの様子で決まります。予定どおりに進まなくても、それも段階のひとつです。
麻酔後の見守りと、親御さんが受診前に聞きたいこと
帰宅後は、麻酔が切れるまでの食事と口元の見守りが中心になります。受診前には、費用や通院の見通し、お子さんへの伝え方も整理しておきましょう。
麻酔が切れるまで、食事と唇・頬をどう見守る?
麻酔が効いている間は唇や頬の感覚が鈍く、噛んでも気づきにくい状態です。切れるまでの時間は麻酔の方法や処置の範囲、体質によって違うため、帰る前に目安と食事を再開してよいタイミングを確認しておきましょう。
- 感覚が戻るまで、食事は歯科医師の指示に合わせて控える
- 熱い飲み物や汁物は、やけどに気づきにくいため避ける
- 唇や頬を噛んだり、指でいじったりしていないか様子を見る
- 水分をとるときは口の端からこぼれやすいので、コップを支える
局所麻酔や削る処置のあとには、次のようなことが起こる場合があります。出方や程度には個人差があります。
- 注射をした部分の歯ぐきの痛みや軽い腫れ
- しびれた唇や頬を噛んでしまうことによる傷や腫れ
- 詰め物をした歯が、冷たい物や噛んだときにしみる・痛む
- まれに、麻酔薬による気分不良やアレルギー反応
- 進行を抑える薬を塗った場合は、その部分の黒い変色
唇や頬が大きく腫れてきた、強い痛みが続く、出血がなかなか止まらないといった場合は、医院へ連絡してください。
治療後は何を確認し、次のむし歯をどう防ぐ?
治療後は、詰め物の違和感や噛んだときの痛みがないかを確かめ、次回の確認予定を聞いておきます。違和感が数日続くようなら、早めに伝えてください。
予防の方法には、生え変わりの時期に合わせた歯磨き指導、フッ素塗布、奥歯の溝を埋めるシーラントなどがあります。歯磨きを頑張っているのにむし歯ができる場合は、生活習慣や唾液の状態から原因を探ると、ご家庭でのケアを見直す手がかりになります。
治療費と助成はどう確かめる?
診察やレントゲン、麻酔、削る処置、詰め物の多くは保険診療の範囲で行われますが、材料によっては自由診療(公的医療保険が適用されない)になる場合があります。乳歯は保険診療の材料で対応することが多く、自由診療が選択肢になるのは、主に永久歯の詰め物や被せ物にセラミックなどの材料を選ぶ場合です。
セラミックの詰め物や被せ物について、治療の進め方や通院回数・期間は歯の状態などによって異なります。費用も詰め物か被せ物か、材料の種類によって変わるため、具体的な見通しは歯科医師にご相談ください。当院の費用は診察のうえでご案内します。
セラミックスはもろく、主に前歯や小臼歯に用いられます4。処置の後に、しみる・噛むと痛むといった症状が出ることもあります。処置の前に、保険の範囲でできることと自由診療の内容・費用・通院回数の見通しを医院へ確認しておきましょう。
子ども医療費の助成は、対象年齢や手続きが自治体ごとに決められています。お住まいの市町村の窓口やホームページで確かめてください。なお、自由診療の費用は医療費助成の対象外となるのが一般的です。
当院に限らず、通院先を選ぶ際は交通手段や駐車場の有無も確かめておきましょう。下のお子さんの預け先が気になる場合は、託児の有無や同伴できるかを予約前に確認しておきましょう。
受診前にお子さんへどう伝え、歯科医師に何を聞く?
お子さんには「痛くないよ」と言い切らず、「歯を見てもらって、数えてもらおうね」と、まず診てもらうことを伝えてみてください。約束と違う体験をすると、次の受診への不安が強まることがあるためです。
親御さんは、むし歯が乳歯か永久歯か、どのくらいの深さか、麻酔は必要か、初診でどこまで行い処置を別日にするのはどんな場合か、帰宅後に何に気をつけるか、をメモしておくと相談がスムーズです。健診の用紙を持参し、これまでに嫌がった場面も伝えましょう。
予約の段階で「怖がりなので、慣れる練習から始めたい」とひと言添えておくだけでも、当日の進め方を一緒に考えやすくなります。相談したその日に、治療まで進めなくてもかまいません。
よくある質問
Q. 子どものむし歯治療を、全身麻酔で受けることはできますか?
A. 強い恐怖心がある、治療が必要な歯が多いなど、通常の方法では治療が難しい場合に、鎮静法や全身麻酔下での治療が検討されることがあります。鎮静法の効果や薬の選び方については研究が続けられています3。全身麻酔下の治療は対応できる医療機関が限られるため、まずはかかりつけの歯科医院で相談し、必要に応じて紹介を受ける流れが一般的です。
Q. むし歯治療で麻酔を使うのは、どのくらいの段階からですか?
A. 削る範囲が深く、処置中の痛みが見込まれる場合に局所麻酔を検討することが多く、表面だけの浅いむし歯では使わずに処置できることもあります2。ただし、痛みの感じ方やお子さんの協力の度合いによっても判断が変わるため、歯科医師が診察のうえでご提案します。
Q. 削るときに麻酔を使ってほしいと、こちらから伝えてもよいですか?
A. はい、伝えていただいてかまいません。注射を怖がるお子さんの場合も、表面麻酔を先に使う、器具を見せて説明してから進めるなど、負担を抑える工夫を一緒に考えます1。麻酔を使うかどうかは、むし歯の深さとお子さんの様子を踏まえて相談しながら決めましょう。
Q. むし歯の麻酔は、どのくらいで切れますか?
A. 麻酔の方法や処置の範囲、体質によって異なるため、一律にはお伝えできません。治療後に、感覚が戻るまでの目安と、食事を再開してよいタイミングを歯科医師に確認してください。それまでは、唇や頬を噛んでいないか、熱い物でやけどをしていないかを見守ってあげてください。
Q. 学校健診で受診をすすめられましたが、痛がっていなくても受診したほうがよいですか?
A. 痛みがなくても、むし歯が進んでいることがあります。初期の段階なら、歯磨き指導やフッ素塗布で経過をみる選択肢を相談できる場合もあるため、早めに診察を受けて状態を確かめておくと、治療の進め方を考えやすくなります。
参考文献
1. Gizani S, Seremidi K, Katsouli K, et al. Basic behavioral management techniques in pediatric dentistry: A systematic review and meta-analysis. Journal of dentistry. 2022. PMID: 36152953 / DOI: 10.1016/j.jdent.2022.104303
2. Dorri M, Martinez-Zapata MJ, Walsh T, et al. Atraumatic restorative treatment versus conventional restorative treatment for managing dental caries. The Cochrane database of systematic reviews. 2017. PMID: 29284075 / DOI: 10.1002/14651858.CD008072.pub2
3. Ashley PF, Chaudhary M, Lourenço-Matharu L. Sedation of children undergoing dental treatment. The Cochrane database of systematic reviews. 2018. PMID: 30566228 / DOI: 10.1002/14651858.CD003877.pub5
4. さし歯・冠 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/trouble/postcrown.html
愛知県立豊田西高校 卒業
国立鹿児島大学歯学部歯学科 卒業
医療法人小室会 小室歯科ステーション診療所 勤務
東岡崎ジョイ歯科開院
医療法人JOY 設立
株式会社ジョイ SONA DENTAL LABORATORY 設立
実習受け入れ実績:名古屋医療秘書福祉&IT専門学校(歯科助手実習)
社団法人日本健康寿命を伸ばす会 代表理事
オステムインプラント公認アドバイザー
大阪口腔インプラント研究会25期生
大森塾8期生
臨床歯科麻酔管理指導医
日本有病者歯科医療学会
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